世界は何色で見えますか?(政宗)





「Hey,Honey!Good morning!!」


すぱん!と勢いよく襖を開ける。
やめろと再三言われてたって関係ねえ!
朝一で玲の顔を見るのは俺しか居ねえんだ!

But,今日は既に影も形も見当たらない。
相変わらずモノの少ねえ殺伐とした部屋は、主が居ないことで寂れていた。


「Shit…何処行ったんだ?」


勿論、此処には俺一人しかいねえ、返事なんか返ってくるはずも無く。
遠くで小十郎の声が聞こえたんで、仕方なくそこを後にした。
まるで見計らったように、曇天から耐え切れず雨が降り出す。









軍議に鍛錬。それから政務。
何時もと同じ事をこなしていても、何時もと違う、と思う理由は、玲に一回も会えねえからか。
苛々をそのままに、煙管をくわえて思い切り吸い込んだ。


「……Hey,小十郎」

「どうかされましたか?」

「玲はどうした」


俺が低くそう問うと、小十郎は少し眉を動かした。
何年も一緒に居るんだ……どう思ってるかくらい予想がつく。


「……知らねえって面してんな」

「はい、存じ上げておりませぬ。申し訳ありません」

「No problem. 構わねえ」


口ではそう言いつつも、内心はまったくもって落ちつかねえ。
小さく舌打ちをしてから、自室へと向かう。
くるくると煙管を手で遊びながら歩けば、微かな香が風に攫われて消えていく。

ふと視線を向けた先、鮮やかな蒼が見えた。
一瞬で消えたそれを、無意識で追いかけていく。
もう少し。あと少しで、手が届く――――――。


「うわっ?!」


捕まえた、そう思った瞬間に聞こえたのは、朝から探し続けた玲の姿。
わたわたとうろたえる身体を、一気に腕に閉じ込めた。


「っ、政宗……さん?」

「Good evening, Honey. …And, what are you doing?」


出来るだけ低く、玲の耳元でそうささやく。
それだけで耳まで真っ赤にして俯く姿に、くつりと喉で笑った。
肩を掴んで向かい合わせ、…悪ィが逃がさねえぜ?


「い、異国語はわからないと…!!」

「Hum,じゃあわかるように言ってやるよ…何してたんだ?」


そう問うと、玲は少しの間固まってから、諦めたように体の力を抜いた。
小さい声でどうぞ、なんて言われて渡されたものは、ちっとばかし歪な羽織で。
俺好みの蒼と、細々と刺繍された伊達家の家紋、……それから、何時だか南蛮の書物で見た、Coolな紋様。
入れ替わったかのように固まる俺に、玲が口を開いた。


「政宗さん、今日が誕生日だと聞いて……作ったんですが、上手に出来なくて…」


言い淀む玲の言葉を、熱の共有で喰らい尽くした。
小さなLip noiseを残して離れたあと、我慢できずに再びその身体をかき抱く。

―――指先に出来た無数の傷も、ちっとばかし腫れた目も。
俺の為だと緩んだ顔を、見せるなんてCoolじゃねえ。
玲の肩に顔を埋めたまま、くつくつと笑う。笑う。


「玲……Thanks. 何よりのPresentだ」


おずおずと俺の背に回される腕。
その温もりを感じて、より一層腕に力を込める。


「おめでとうございます……政宗さん」


玲の腕も、心なしか強くなった気がした。








(例え世界から色が消えたって)
(アンタの言動ひとつで俺の世界は色づく)

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政宗様ハピバ記念!
たまにはブレイクせずに甘めで。



title:豹変する10のお題
配布元:Abandon(PCサイト様)
100803
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