古傷の行き先。(政宗)


―――人が狂う瞬間なんざ、随分とあっさりしたものだった。
一騎打ちで、俺は勝った。
玲の主だった、人間に。
倒れてく身体に、玲の目はこれでもかという程見開かれて、それから。


「はは、…あはははは、」


乾いた笑い声が、炎の中に響き渡った。
返り血のこびりついた玲の頬を涙が伝って、色を奪う。


「玲!目ぇ覚ませ!!」


俺の言葉は、……No,もう誰の言葉も届いていない。
心底楽しそうに笑う玲が、俺に突っ込んでくる。
咄嗟に受け止めたが、これが女の力かと思うほど押された。
弾いた金属音が、やたらに耳に留まる。
握りすぎた刀の悲鳴が聞こえた気がした。


「……ッ、HELL DRAGON!!」


ほぼタメずに、豪快にブチかました。
それに玲は、…自ら突っ込んで、俺との鍔競り合いをする。


「玲!オイ!!」

「はは…、あはははははっ」


もう返事すら貰えねえ。
ただ壊れたように笑う玲に、俺は何時間違えたのかとぼんやり考えた。


「あは、あははは、あーっはっはっはっはっは!!!」


狂気と狂喜に染まった瞳は、凶器の鋭さで俺を楽しそうに見ていた。
その瞳には、見覚えがあった、But,死ぬ訳にはいかねえ。

唇を噛んで、刀を振るう。
嗚呼、俺は何処で間違えた?






(二度と見たくなかった瞳にさえ魅了された)
(けど、もう玲は戻って来ない)
(わかってるのに、認めたくなくて)
(縋るように名を呼んだ)

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宙ぶらりんになってしまった…orz



title:豹変する10のお題
配布元:Abandon(PCサイト様)
100409
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