五つの指先が動く。(政宗)





奏でる旋律は、堂々と、重苦しく。
それに比べて伴奏は、低い音に抗うように流れ去っていく。
壮大なストーリー性が、その僅か一分半程に込められていた。
最後の和音が、明るいながらも低く共鳴する。


「―――Hey,何てtitleなんだ?玲」

「練習曲作品10の12…"革命"」


背後からの声には振り向く気も無い。
ここに居るのは自分とその声の主―――戦国武将だかとほざきやがった男だけ。
それで毒吐き散らした舌戦が記憶に新しい。

はあ、と一息。
年代物のピアノと楽譜を眺めてから、そっと鍵盤の蓋を閉めた。


「もうやめんのか?」

「やめようが続けようが勝手でしょ」

「No!俺は聴きてぇ」


…この殿様(仮)、本当に俺様すぎて嫌になる。
じっと睨むようにすると、「弾いてくれんのか?」なんて言う始末。
拒否権与える気もないくせに。

もう一度蓋を開けて、浅く座った。
取り出した譜面を眺める。


「……練習曲作品10の中ならいいよ」

「前に弾いてた…"木枯らし"ってのは?」

「アレは練習曲作品12の11。括りが違うの」

「Okey…じゃあコレ」


さっと譜面を見て、直ぐに弾きはじめる。
軽く、跳ねるように。
どちらでも取れる旋律はまるで遊んでいるようで。

楽しんで、喜んで、考えて。
まさに感情ともとれる曲は、無愛想な自分とは正反対。

弾き終わって見た表情に、思わず顔を逸らした。






五つの指先が動く。
(顔よりもずっと表情豊かで)
(それでも君には敵わない)
(ねえ、笑ってよ)

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意味不ですねすいません。
取り敢えず政宗逆トリってことで。←



title:カウントダウン的10のお題
配布元:Abandon(PCサイト様)
100330
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