「自己犠牲は馬鹿がやることだ」(小太郎)


    
    
    
    
既に慣れてしまった気配。
それが遠ざかって、妙な満足感を得た。
忍は私情も、感情も、己のすべてに嘘をついて生きるのみ。
だが、これだけは嘘じゃないと言えるものが出来たから。

守りたい、と。
自分が仕える主はたったひとりだと。
この想いだけは、紛れも無い本物だと言える。


「……伝説は、伊達じゃないってことか…!」


憎々しげに呟かれた言葉は、風に乗って消えた。
己の周りに転がる肉塊。
ただ、不利なのはこっちだ。
ココロが折れなくても、身体が無理だと、悲鳴をあげている。

ああ、もうすぐ限界か?
願わくば、彼女は幸せに――――…


「後ろガラ空き――――…!」


耳障りな声。…それと、悲鳴。
慌てて振り向こうとすると、背中に軽い重さ。
心地好い、布越しの体温。


「…こんばんは、風の悪魔さん」


聞き慣れた、恋い焦がれた声。
忘れられない、愛しい主のもの。
雑兵を蹴りで怯ませつつ、主は不敵に笑った。
呆けていた意識を、漸く現実に引き戻す。


「(主!何故ここに?!)」

「嘘つきに罰を与えようと思ってね」


ひたり、唇にあてられた指は暖かくて。
向かってくる兵を蹴りながら、にっこり笑って、今にも泣きそうな目で指差した。


「主の命に背くの?小太郎、」


そういった主の声は酷く穏やかで、そっとその頬に触れた。
謝罪と、感謝が伝わるように。


「何のつもりかなんて知らないけどさ、」






自己犠牲は馬鹿がやることだ
(まったく、)
(さあ、共同戦線といこうか)
(やりにくいって?嘘つきには丁度いいよ)

---------------------------------

初小太郎\(^p^)/
なのに変換がないw



title:暗黒系10のお題
配布元:Abandon(PCサイト様)
100313
back