キスをした唇は鉄の味。(半兵衛)



「少し休みなよ、―――半兵衛」

「…あぁ、玲か」


私の声に反応しつつも、その手を休める事はない。
戦が近いと言っていたし、戦略を練っているんだろう。
はぁ、と小さくついた溜息は何処に届く訳でも無く、飲まれて消えた。


「お願いだから休んでよ。半兵衛が倒れたりしたら、困るのは兄様なんだから」

「…その通り、だね。僕が秀吉を困らせる訳にもいかない」


漸く手を止めてくれた。
半兵衛は兄様である秀吉に、人として心底好いているらしい。
まあ、私としては兄様が無事だし全然いいんだけどさ。


「お茶どーぞ。お茶請けは大福だけどいい?」

「かまわないよ、玲もこっちへおいで」


手招きをしてくれるから、言葉に甘えて隣へと座った。
暖かい、この時だけは、半兵衛の1番は私で間違いない。
いくら"好き"の意味合いが違っていても、兄様の事ばかり言う半兵衛に、何回私は怒ったことか。


「玲、」

「なあに、半兵…んぅ」


唇に暖かい感触。
…ああもう、不意打ちは卑怯だ。
余裕の笑みを浮かべる半兵衛から視線を逸らしたとき、ふと口の中がおかしい、と感じた。


「…ねえ半兵衛」

「なんだい、玲」

「また、薬飲まなかったでしょ?」


表情が引き攣った。
あ、図星だったんだ。








(ちゃんと飲む!)
(僕が悪かったよ…でも、よくわかったね)
(接吻して血の味がしたからねー…)

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秀吉妹設定。
半兵衛がべったりだといい←




title:暗黒系10のお題
配布元:Abandon(PCサイト様)
090707
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