ONE PIECE ネタ シャンクス逆トリ。あるいはトリップしてきていた主人公のもとに流れ着く。 昨日、ガキを拾った。真っ赤な髪はどこかで見覚えがあるような気がしていた。 「…シャンクスっていうのか?」 「おう!」 「…帰り方は分かるのか?」 「分からん!」 いっそ潔く言い切った赤い髪の少年は、帰れないという悲観的な状況を全く感じさせない明るい笑みを浮かべた。 「…なんでそんな楽しそうなんだ」 「こんな経験初めてだ!初めてのことは何でもわくわくするだろ?」 言っちゃ悪いが、流石シャンクスだな、という感想しか出てこなかった。 そして、何やかんやでシャンクスの面倒を見ることになった。 いずれは四皇とかいう大層強い海賊になる彼だが、シャンクスはシャンクスでもまだ麦わら帽子も身に着けていないような子供時代のシャンクスなのだ。子供はなるべく幸せに育つべきだと思っている主人公に、こんな辺鄙な場所でまだ幼い子供を放り出すという選択肢はそもそも存在しなかった。 彼との生活はそれなりに楽しかった。ワンピ世界の住人である彼は酷く傷の治りも早く、そのせいかあれこれと試してはいつも怪我をするので毎度はらはらし通しだったけれど。 * 海賊になりたい、という思いだけが先走る中、まだ何もできないガキだったころのこと。 おれは見も知らない場所に文字通り落っこちるという経験をした。 そこは酷く穏やかな場所だったが、行く人来る人の髪はすべて黒く、赤い髪を持つおれは奇異の目を向けられた。 そして、頼る場所もないまま何となく歩いていたところ、出会ったのがその人だった。 その人はとてつもなくお人好しだった。どのくらいお人好しかというと、見も知らないはずのおれを家に置いてくれて、衣食住を何の見返りも求めず保障してくれるほどにお人好しだった。 そこはとても居心地がよかった。グランドラインとは比べ物にならないくらいとても安全な場所だった。まだガキだったおれは、うっかり油断していたのだ。 「シャンクス!」 おれを呼ぶ声が聞こえた次の瞬間、見えたのは、おれを庇って炎に身を投げ出したナマエの姿だけだった。 (たぶん何かの機器がショートするとかなんかで火事になる) という感じで主人公が失明した後シャンクスは元の場所へ戻る。 シャンクスがフーシャ村にいるあたりで今度は主人公が海の上のレッドフォース号にトリップ。小さいルフィとも会う。シャンクスは当然原作レベルに大きくなっており、主人公より数歳年上に。 海は危険だから、とシャンクスは主人公をマキノさんのところに預ける。 今度は主人公はルフィと仲良くなるかもしれない。ちっちゃいころのシャンクスにそっくりだ、と和む主人公を見てシャンクスは地味にもやっとしている。 「…初恋の人だったんだよ」とか言うお頭にクルーは爆笑。 主人公は主人公で連れて行ってもらえないことにちょっとがっかり。まあ盲目だしこちらの世界の人間より傷の治りも遅いし仕方ない、と自分に言い聞かせていたところに、ルフィに一緒に頼もう!と誘われる。 「いや、ルフィ、ほんとにいいんだって」 「でも本当はナマエついていきたいんだろ?シャンクスたちの出航のときいっつもさみしそうじゃんか!」 「それは…でも、こんな体と目じゃあ無理だよ」 「無理だなんて言うな!」 「………自由を追い求めるのはすばらしいことだけどな、ルフィ。それは強い人にだけ許されることなんだ。自分の身も自分で守れないようなやつには身分不相応な願いなんだ。…頼むから、変な期待を持たせないでくれ、ルフィ。主人公だからって夢できらきらしすぎるんだよお前。…諦めさせてくれ。お願いだから」 主人公はたぶんまだ失明してからそんなに経っていない。庇ったことは後悔していないけど、失ったものは大きすぎた。 「ミブンフソーオーってなんだよ!そんなもん知るか!したいんならしたいって言えばいいだろ!ナマエのいくじなし!」 ルフィはあまりにもまっすぐすぎて、今の主人公にとっては見るのもつらかった。 まるで願いは本当にかなうのではないかと思えてしまうから。夢は夢のままで終わらないのではないかと。 「……そんなことがかなうはずない。海へ出たくなんかない、ここにいたいんだ、本当だ。それが願いなんだ」 しかしルフィのために腕を失った後、主人公が「目が見えない弱い自分なんかが願いを口にしていいはずがない」と言っていたのを知ったシャンクスがちょっとお怒りモード。 「本当にそんな風に考えてたのか、ナマエ」 「…卑屈だと思うか?ただの真実だろう?」 「………おれは、」 「…なぁシャンクス。………火傷の体は、潮風にはちと痛すぎるよ」 お互いに、言いたいことは本当はもっと別のことなのに、うまく伝えられなくて傷つけあう。 いろいろ言いたいことがあるのにうまく口にできないシャンクスと、他人のために自分の体の一部を犠牲にしたことをシャンクスほどさらりと受け流せない主人公の二人でしばらくもだもだ。 そんな感じのお話。 2014/12/10 23:45 back |