太陽が空高く昇り、キラキラとわたしたちを照りつけて、赤々と燃えるように輝くながらゆっくりと沈んでいく。

毎日がそれの繰り返しで、それが普通で。


「…月子?」

「あ、ごめん。起こしちゃった?」

「いや、俺は目が覚めただけだから大丈夫だけどよ。どうかしたのか?眠れない?」


だけど訪れる暗闇と静寂はわたしをいつも不安にさせる。

明けない夜などないことは知っているのに、どうしようもない焦燥感と、どうしようもない、この不安がわたしの胸を締め付けて来る。

知らないうちに考えてしまうのは、わたしが追いかけても届かないような、遠い遠いあの人の事ばかりで。


「んーん、なんとなく朝焼けが見たくなっちゃって。哉太は眠かったら寝てね」

「いーよ。付き合ってやるよ」


哉太とベランダに並んで立って、街を眺める。街灯と月明かりだけでも街の形はわかる。

やっぱりこの時間はすこし風が冷たいな。

そんな風に思ってたら、いつの間にか哉太がブランケットをわたしの肩に掛けてくれた。それに包まれるようにして身体を丸くする。

哉太はいつもどんな時でもわたしのことを見ていてくれるんだな。

そう実感する瞬間は多くて、その度に嬉しくなるのに、それに引っ付いて罪悪感が胸の中をぐるぐると駆け巡った。


「お前は何も気にすんなよ」

「哉太、」

「俺は俺の意志でお前の傍にいるんだ。お前の傍にいたいから、いるんだよ。だから気にしなくていい。」


どうしてだろうな。

哉太には全部バレちゃうんだよ。


「ごめんね、哉太。わたし哉太にすごくひどい事してる。こんなの良くないのに」

「気にすんなって言ってんだろ。俺があいつを忘れさせるから、何にも考えるなよ。俺はお前が好きで、お前はあいつが好きで、それだけだ。」


哉太は昔から口は悪いし、意地っ張りだし、よく口喧嘩になっちゃうけど、誰よりも周りに敏感で、誰よりも人の気持ちを感じるのが早い。


「哉太は、優しすぎるよね。」

「…何だよそれ」

「ううん…ありがとう。ごめんね」


ありがとうもごめんねもきっと哉太が求めてる言葉じゃない。

そんなことわかってるのに見て見ぬ振りをして、一人になるのが怖くて哉太を離せずにいる。

ずるいんだよわたしは。哉太にそんなに大切にしてもらえるような、そんな女の子じゃないんだよ。


"愛してるよ"。

この言葉を口にすることが出来たなら。