「…宮地くん?」

「……このままで、いてくれ」



いきなりだった。

今日は部活がお休みで、久しぶりに二人で映画を見て買い物をして甘い物を食べた。それでも門限までにはまだ少し時間があったから寄った彼の寮の部屋で。

部屋に着くなり抱き締められて、ドアが閉まる頃には宮地くんの腕の中にいた。

ただでさえ片手で数えられるほどしか入ったことのない彼の部屋で、彼に抱き締められて直接この心臓の音が伝わってしまいそうだ。緊張で身体が震えてるのが自分でも分かる。


「…っ悪い、苦しいか?」

「ううん…平気、だよ」

「ずっとこうしたかったんだ。今日久しぶりにお前の私服を見たせいか、いつもと雰囲気が違うから、その…」

「?え」


首筋にかかる宮地君の吐息に思わず肩を竦める。けれどそれをも阻止するかのように抱き締める力を強くする宮地君。

なんだか久しぶりに彼の体温を感じた気がして、嬉しさとか安堵感とか、いろんな感情に目頭が熱くなった。


「ここまで我慢するのでも精一杯だったんだ、お前を抱き締めたくてしょうがなかった」

「宮地、くん」

「お前は温かいな…」


耳元で聞こえる彼の声はいつもより低く、熱っぽくて。余計にドキドキする。

わたしの身体に回された腕はわたしとは全く違う、筋肉質で、でもスラリと長い、異性を感じさせる腕で。


「…っ!」


チュッと乾いた音が聞こえて、頬に感じる柔らかい感触。

慌てて振り向くと、少しだけ身体を傾けていた宮地君と至近距離で視線がぶつかる。

その瞬間に奪われる、唇。


「…んっ……」

「………月子、」

「っ…あ、」


言葉を発する前に呼吸ごと奪われる。

頬に添えられてたはずの手はいつの間にか後頭部に移っていて。

熱くて、あつくて、触れてる唇も、絡み合う舌も溶けてしまいそうだ。

何度も何度もキスを求めて来る宮地君はまるでわたしの知ってる宮地君とは別人で。こんなに強引なところ知らない。


それに、いま、月子って


「……月子」

「っみやじく…」

「……好きだ、月子」


反則だよ、こんなの。

ドキドキしないわけがないじゃない。

顔を真っ赤にしてるわたしが宮地君の瞳に写ってる。きっとわたしの瞳にも世界一大事で愛しい彼だけが写ってるんだろうな。なんだか恥ずかしくて、でも嬉しくて少しくすぐったい。

このままこれから先も変わらない愛を信じて、それだけで、わたしは生きていけるよ。

貴方がいるなら、それだけで。