ひらり、きらり。

夕日の紅で染まる屋上庭園にわたしひとり。すこし肌寒い風が頬を撫でて、身震いをした。

色褪せた葉っぱが落ちて、どこからか金木犀の香りがしてくる。

そんな秋の訪れに胸が弾んだ。



「すいません、お待たせしてしまって」

「ふふ、お疲れ様。」


待ち合わせしていた屋上庭園に急いできてくれた恋人。

まだ肩で息をしている彼に持っていた紅茶を渡すと、いつもの笑顔を見せてくれた。

その笑顔を見るだけで今日あった嫌なこととか、悲しかったこととか、すべて飛んでいく気がするのは好きになった欲目なのかな。


「今日はどうしたんですか?めずらしいですね、貴女から誘って下さるなんて」

「ごめんね、急だったのに」

「いえ、いつでも呼んで下さっていいんですよ?僕はその度に嬉しくなりますから」


わたしの頬にゆっくり触れた掌はとても綺麗で、温かい。

安心するなぁ…本当に。

付き合う前からも、付き合ってからも、颯斗くんはわたしの安定剤みたいだ。



「やっぱり日が落ちて来ると少し肌寒いですね。頬が冷たいです。」

「……」

「月子さん?」


いつもいつもわたしばかりが助けてもらって、幸せな気持ちになって、その分また颯斗くんを好きになる。

そんな幸せの繰り返し。


「は、颯斗くん!」


だから、今日はわたしが颯斗くんを幸せな気持ちでいっぱいにしたい。


「?どうかしましたか?顔が赤いみたいですけど…どこか体調でも…」

「こ、これ!受け取って下さい!」


わたしが差しだしたのは小さな箱。

透明のケースから見えるのは、この日の為に頑張って探した腕時計。


「えっと…これは、僕にですか?」

「う、うん!この間腕時計をなくしたって言ってたの聞いて、それでプレゼントできたらなって…その、お誕生日おめでとう颯斗くん」


颯斗くんは驚いた顔をしてそのままその場に固まってしまった。

好きな人の特別な日を迎えるのは初めてのことで、どうすればいいかわからなかったけど、自分なりに考えて、頑張ったつもりだったんだけど、この沈黙はすごく重く感じる。



「…颯斗くん?」

「すみません、少し驚いてしまって。まさか貴女から祝って頂けると思ってなかったので。ありがとうございます。」

「…あのね、それで」


それでね、

伝えたいことは、数え切れないほどあるのにどうすればいいかわからない。

どんな言葉を使っても、颯斗くんへの気持ちが大きすぎて表せないんだ。



「…あの。ひとつだけ我儘を言ってもいいですか?」

「え?」


ふと気が付けば、綺麗な瞳がわたしの顔を覗き込んでいた。あまりにも近いその距離に思わず俯いてしまう。


颯斗くんはいつものように軽く笑って、わたしの背中に腕を回した。

視界が揺れて、ぎゅっと抱きしめられて、感じる体温に思わず顔が緩んでしまう。




「…ずっと、」


ゆっくりと紡がれる言葉に耳を澄ませる。

この鼓動が聞こえていたらどうしよう。

いつもいつもわたしばかりがドキドキさせられてるから、今日こそはわたしがドキドキさせたいって思ってたのに。




「ずっと、僕の世界の中心でいて下さい」


震える彼の肩を感じて、涙が出そうなくらいに胸が締め付けられた。


この先もずっとずっと傍にいられるなら、愛する人と一緒に生きて、そして一緒に死ねるなら。

わたしはなんだってするよ。




「…っはい」



夕日が沈み始めて、たくさんの影を作ってるよ。

二人で一緒に溶け込んでいこうか。




















(彼が生まれた其の日を愛した)

そらそら誕生日おめでとーう\(^o^)/

ちょっともうコンセプトがわからなくなった上に急いで書いたらこんなことに。

いろいろとごめんなさい。でも祝いたい気持ちには変わりはないです。公式のツイッターに泣いた。