誰か教えてください。 「…先生、起きて下さい!」 「んーまだいいじゃないか…寝かせろ」 この男を動かす方法を。 「掃除終わりましたからお仕事してください!」 「やるやる…あとからやるから…」 「ちょっと!話しながら寝ないでください!」 どうしたらいいんだろう、この人。 保健医なのにそんな雰囲気なんて1ミリもないわたしの恋人は、いつもこうやって生徒が使うはずのベッドに転がって寝ている。 「お前がいるから保健室は安心じゃないか。だからおれは休む。解決」 「どこが解決なんですか!」 わたしより10歳も年上なのに、時々すごく子供っぽく見えちゃうのはなんでなんだろう。 無理矢理動かしても起きない事はわかってるけど、今日はお昼からずっと寝てるみたいだったからいい加減起きてもらわないと。 「わたし部活あるのでそろそろ行かないといけないんです!」 「んー…もうそんな時間なのか?」 「そうですよ。だからいい加減起きてください。また琥春さんに怒られちゃいますよ?」 そう言うと先生はむくりと身体を起こした。 なんだかんだやっぱりお姉さんに怒られるのは怖いのかなぁなんて思ってたら、いつの間にか先生の腕がわたしの腰に巻きついていた。 「せっ先生!?」 「騒ぐな。ちょっとだけこのままで」 先生を引き剥がそうとしても、思った以上に強い力で絡み付いている腕を動かすことができない。 わたしのお腹に先生の頭が埋められていて、鼓動を聞かれてしまいそうで少し恥ずかしい。 「あったかいな、お前」 「…鍵閉めてないですよ」 「それは困ったな。閉めてくるか?そのかわり閉めたらもうどこにも行かさないけどな」 「っ」 どうしよう。どうしよう。 鍵も閉めてないし、誰が来るかもわからない保健室でこの状態はさすがにダメなんだってわかってるのに離れたくないって思ってしまうのが本当の気持ちで。 先生は冗談のつもりで言ってるんだろうけど、こんな体制でそんなこと言われて、わたしがどんなにドキドキしてるのか気づいてるんだろうか。 顔の熱が上がっていくのが自分でもわかる。 「…さてと、俺も仕事するかな」 そう言って起き上がった先生は、ベッドの隅に置いてあった白衣を着て、立ち上がった。 先生の体温が感じれなくなって少し寂しいと思ったけど、そんなこと言えないし、言ったらまた子供だって思われてしまう。 「じゃあわたしも部活に…んっ」 言葉の途中で突然奪われた唇。 先生の白い肌と長い睫毛が視界に入って、キスされたんだと気づいた。啄むような軽いキスを何度も何度も繰り返されて、動けない。 先生に体中の熱を吸い取られてるような気がしてしまう。 「…よし、充電完了」 ゆっくりと唇が離れて、優しく頭を撫でられた。 先生はそのまま何事もなかったかのように頭を掻きながら机のほうへとフラフラと歩いていく。 「いっいきなり何するんですか!」 「ははっ何のことだ?顔が赤いな」 「もうっ!惚けないで下さい!」 すごく間抜けな顔をしているんだろうなわたし。 いつもいつも、いつも どんなにわたしが頑張っても、結局は先生のペースに巻き込まれてしまう。 「キスしたかったんだよ、それだけだ」 ほら、また。この一言だけで。 わたしばっかりがドキドキさせらてて悔しくて、でも嬉しくて。 この気持ちをなんて呼べばいいんだろう。 (甘い熱だけ残して) なんだこれ、なんだこれ。 甘くもないしシリアスでもないしなんだこの中途半端感(´ω`) カーテンをどうにか使えないかと思ったけどうまく使えなかったのでまたリベンジしたいと思います。 保健室っていいですよね。男の先生だからそう思うのかな。 |