「んー…っ終わった!」


溜まってしまっていた生徒会の作業と終わった頃には、もう窓の外は暗くなっていた。

来週から修学旅行が始まってしまうから生徒会の仕事はできるだけ片付けて置こうと夢中で取り組んでいたら、いつの間にか遅い時間になっていたみたい。

気合いを入れすぎちゃったかな。ちょっと疲れちゃったなぁ。



「うわぁ…今日も綺麗…」


部屋の片づけをしようと窓際に立った時に、空に光るたくさんの星が目に入った。

最近バタバタと忙しかったせいでなかなかゆっくりできる時間もなかったから、久しぶりに癒された気がして、少し泣きそうになってしまった。

寮の門限まではまだ少し時間があるし、せっかくだからゆっくり星を見ながら帰ろうかな。



「…お仕事終わったのか?」

「っ」


てっきりこの部屋にはわたし一人だと思っていたから、突然に開いたドアに跳ね上がる程びっくりしてしまった。

慌てて振り返ると、後ろに翼君が立っていて。


「っ翼くんかぁ、びっくりしちゃった」

「……ごめんちゃい」

「ううん、一人は怖かったから少し安心しちゃった」


そう言うと、何故か翼くんは自分の鞄を持ったまま急に俯いて黙り込んでしまった。

何か言おうと口を開けようとして、でも声にはならないみたいだ。

その表情があまりにも悲しそうで寂しそうで、わたしまで苦しくなってしまいそうだった。

また実験でも失敗しちゃったのかな?って思ったけどいつもなら開き直って騒いでるし、何かあったのかも…それともわたし何か悪いこと言っちゃったのかな。どうしちゃったんだろう。

こんな翼くん見たことないからどうやって声をかければいいのかわからない。余計なこととか言っちゃいそうで怖くて。


「ね、翼くんもこっちおいでよ。今日も星が綺麗だよ」

「ぬ…」

「ほら、一緒に見よ?」


翼くんに悩みごとがあっても聞いて欲しくないなら無理に聞かない方がいいだろうし、できるだけ空気を和ませてあげたいなぁ。なんて。

あえて何も触れずに手招きすると、翼くんはパチパチと瞬きをしながらゆっくりとこっちに歩いて来た。

わたしももう一度窓の外を見ようとした瞬間。


「…っ」


後ろから回された長い腕に、すっぽりと身体を包まれた。


いきなりのことで、考えがまとまらない。
停止する思考、伝わってくる体温、頬にかかる吐息。

抱きしめられてると気づいたのは、翼くんの声が耳元で聞こえてからだった。


「書記も行っちゃうの?」

「え?」

「修学旅行…」


どうしてこの体制でいきなり修学旅行の話になるのかわからなかった。

でも、翼くんがあまりにも悲しそうな声だったからわたしはどうすることもできなくて素直に頷いた。

修学旅行は大事な学校行事だし、生徒会室でもその話をしてたから翼くんも知ってると思ってたんだけど…


「どうしても?どうしても行かないといけないのか?」

「きゅ、急にどうしたの?」

「わかんない、わかんないけど、書記がいなくなるのかと思うと急に胸が苦しくなったんだ」


初めてこんなこと言ってくれた。

いつもいつも、寂しいとか会いたいとか思うのはわたしだけだと思ってたから、驚きを隠せなかった。


「書記と離れたくないって思うのは俺だけなのか?書記は、俺がいなくても寂しくないのか?」


その言葉と同時にさっきより強い力で翼くんの腕が絡みついて来て、苦しいくらいに抱きしめられる。

微かに翼君の腕が震えているのに気がついて、思わずわたしもその腕をぎゅっと握ってしまった。


「…あったかい」

「ふふふ、なんだか嬉しいな」

「ぬぅ…どうしてだ?」


誰かにこうやって必要とされるのってすごく嬉しいんだよ。

それが好きな人ならなおさら。

すごく心がポカポカするんだよ。


「翼君が寂しくならないようにいっぱいいっぱい電話するよ。お土産も買ってくるから楽しみにしてて?」

「…絶対だぞ?絶対」

「うん。約束するから」


彼のすべてが愛しくて。

可愛いねって言ったら翼君は拗ねてわたしの首にキスを落とした。



「あ、流れ星!」




そのとき、窓の外で星がキラリ。



「ほんとだ!お願いしないとな!」

「そうだね、何にしよっか」




ずっと、ずっとずっと

君と一緒にいられますように。




















(大きい星に小さな恋)

翼くんの話し方がわからなくて彷徨った挙句こうなってしまった。開き直ったらこんな展開にしかなりませんでした。

今度は可愛い翼くんが書けるように努めます(`・ω・´)キリッ