「…ねぇ。君、それどうしたの?」 今日は久しぶりに一緒にいられる時間があったから、彼女のリクエストで僕の家でのんびりしていた。 慣れない料理を作ってくれて、洗い物までしてくれている彼女。そんな姿を見ていると自然に笑みが浮かんでしまう。 とにかく早く君を抱き締めたい、もっと近くにいたい。 今までこんな感情になったことなかったのに、こう思うのは彼女だからなんだろうな。 早く隣に来ないかな…なんてぼんやり考えてたた時に、ふと目についてしまった彼女の首筋。 ―…彼女の首筋に紅い痕? 「郁?何か言った?」 一瞬、息が止まったかと思った。 紅い痕がつくことなんて日常生活であまりないことだろうし、しかも首筋なんて、嫌な予感しかしないんだけど。 気の所為かと思ったけど、心の中のモヤモヤは増えていくばかりだ。 僕の様子がよっぽどおかしかったのか、君はエプロン姿のままソファーに座っていた僕の傍までパタパタとやってきた。 「どうかした?ごめんね、洗い物に必死になっちゃってて…」 「…っ」 彼女の首筋にかかる長い髪を荒々しくどけると、やっぱり紅い痣はしっかりと彼女の首筋に残っている。 やっぱり気の所為じゃなかった。 彼女は驚いたのか、瞬時に僕から離れていこうとするけど、そんなことさせるもんか。 僕は細い腕を掴んで彼女を自分の膝に無理やり座らせた。 「い、く…?」 「ねぇ、ここの紅いの、なに?」 「へ?」 彼女の首筋をゆっくり撫でる。 慌てている彼女の顔を見ていると、僕の中でん醜い感情が広がっていく。独占欲でも嫉妬でもない、もっと醜い感情。 「僕こんなのつけた覚えないんだけど。誰にされたの?」 「え?」 「ここ、赤くなってるんだけど。どうしてかって聞いてるの」 「あのっ、これは…んんっ」 言葉を遮るように、僕の顔を見上げた彼女の顎を掴んで、乱暴に唇を奪う。 角度を変えて深く深く。1ミリも離れないように。 時折漏れてくる彼女の甘い声ごと食い尽くすように舌を絡めて貪る。 聞きたいけど、聞きたくない。 矛盾してるのはわかってるけど。 「んんぅっ…っは…」 彼女の身体から力が抜けて、僕の胸に落ちてきた。 そのまま僕と彼女の位置を反転させて、ソファーに押し倒すと、彼女の髪が頬を掠めた。 「痛、郁ってば!待っ…んぅ」 絡み付くようなキスを何度も繰り返して、唇を徐々に首筋へと降ろしていく。紅い痕の上に唇を這わせて、僕の印が残るように思い切り吸い付いた。 彼女の腕が抵抗するように必死に僕の肩を押し上げようとする。 その度に少し悲しくなって、何度も何度も彼女の首にキスをした。 「…い、く…!」 「っ何?やめてほしいっていうおねだりだけは聞かないからね。君はこのまま僕の腕に抱かれてて」 「っ」 ほら、そんな可愛い顔するから、余計な虫が着いて来たりするんだよ。 君は無防備だから、あの男だらけの学校にいるだけで心配になるんだ。 「僕以外の誰かが君に触れたなんて考えるだけで許せない。虫酸が走るくらいだよ。わかる?君にこの気持ち」 「だからっこれは…」 足りない。もっと、もっと。 僕のモノだって事が消えることがないように。強く。僕の痕を残したい。 「だからっこれは!火傷したんです!!!ヘアアイロンでうっかりしてて首にぶつかっちゃって…!」 もう一度細い首に噛み付こうとしたときに耳に届いた君の声。 「……え?火傷?」 君の言葉にびっくりして素頓狂な声が出てしまった。 「昨日の朝急いでて火傷したんです。でも赤くなってるの気付かなくて…」 「…っ」 「もしかして…その、キスマークだと思ってましたか?そんなわけないじゃないですか。郁…いるのに」 彼女が拗ねてプイッと顔を反らしてしまった。その姿が可愛くて子供っぽいなんて思ったけど、今はきっと僕の方が子供みたいなんだろうな。 彼女の髪の毛を撫でると、彼女は心配かけてごめんねって言った。 「…はは」 謝るのは僕の方なのに。彼女はすべてを見透かしてるような目をして僕の頬に触れた。 君の手の温もりが伝わってきた瞬間、急に心のモヤモヤが剥がれ落ちて、温かい気持ちが広がっていった。 「…悔しいな」 「?…何がですか」 誰かの事でこんなに必死になるなんて今までじゃあり得なかった。 何も考えられなくなるほど、誰かを繋ぎ止めようと思ったのは初めてだったんだ。 「僕は君の事が好きすぎる」 いつの間にか僕の方が君を好きになっていたなんて。 (泣きたいのは僕の方) また脈絡のない…(´゜Д゜`) 嫉妬とかいろいろぐちゃぐちゃになってる郁が書きたかっただけです。首にこだわったのは完全にわたしの好みです。 アイロンだってわかるところが個人的に気に入らない…ぬう |