一瞬、意識が飛んだかと思った。

熱気のせいで湿度が高くなってるこの部屋で、愛しい人の動きに合わせて痛みが快感になって、それが声になる。

爪先から頭のてっぺんまで、愛しい人でいっぱいになる瞬間。

どうしようもなく酸素が足りない。




「っ…はぁ…」

「大丈夫ですか?先輩」

「…ん、だいじょぶ…」


力が入らずにベッドに寝転がったままのわたしとは違って、梓君はもう何事もなかったかのようにティッシュを取り出して後処理をしているところだった。

ゴム製の"アレ"。

名称を言うことすら恥ずかしいわたしは当然それを触ったことなんかなくて、梓君が簡単に準備したり片付けたりするのがなんだか不思議な気分。

誰かと付き合ったりこういう関係になる上でお互いのために大事だっていうのはわかってるけど。

でも正気に戻った今その光景を見るのはなんだか少し恥ずかしくて、思わず枕に顔を埋めた。


「どうしたんですか?」

「……なんでもない」

「顔真っ赤ですよ先輩?」

「…梓君も男の子なんだなぁと思って」


わたしがそう言うと梓君は当たり前じゃないですか、と喉を鳴らすような笑った。

その悪戯っ子みたいな笑顔を見るとわたしのほうが子供みたいで少し悔しい。憎めないのが悔しい。


「わ、笑わないでよ…しっかりしてるなぁって思っただけだもん…」

「…先輩にだけ辛い思いはさせたくないですからね。こういうことは男である僕がちゃんとしないと」

「…優しいね。ありがとう」

「そんな、当然ですよ」


梓君はわたしの隣に寝転んだ。そのままいつものようにわたしの頭の下に腕を敷いてくれる。

そのまま腕枕をしてくれて、ぎゅうっと抱き締めてくれる。

重くないのかなぁとか疲れないかなぁとか思うけど、そう言おうとする度に梓君に言葉を遮られてしまう。




「梓君…」

「…はい」


でもわたし自身がこの温もりから離れたくない気持ちでいっぱいで。

ゆっくりと目を閉じると、愛しい気持ちがもっともっと膨らんで心地よくなる。

梓君とわたしの温度が重なって、ふわふわしてて、あったかい。


「……あずさ、く……」

「……先輩?」

「………」

「……寝ちゃったのか、な」


耳元で聞こえる低くて優しい声。

すべてを包み込んで来れそうな、そんな感覚になる。こんなにも心から安心できる場所があるなんて。

なんでこんなに幸せなんだろう。

その声をもっと聞いていたいな。聞きすぎて飽きるくらいに




「……おやすみなさい、先輩」




もっともっと、もっと、

























(そしてまた一つ、)
貴方への好きが増えていく