「ほーら、じっとして?」

「だ、だって…っ初めては痛いって言うから…」

「んーまぁ人それぞれなんじゃない?君が怖いならやめるけど」

「まっ待って!大丈夫、頑張るから」


僕に任せておけばいいのに。

やっぱり女の子なんだな。

細くて華奢な身体は不安を感じてるのか、少しだけ震えている。彼女はゆっくりと深呼吸をした後、意を決して僕の腕を掴んだ。


「じゃあ、今からするよ?」

「…うん」


ぎゅっと僕の腕を掴む力が強くなって、彼女の瞼が落ちる。

その瞬間を見計らって、僕は彼女の耳にピアッサーを打ち込んだ。



「っ!」


鈍い音がして、小さな身体が跳ね上がる。

ピアッサーを離すと彼女の耳は少しだけ腫れていて、ファーストピアスがしっかりと装着されていた。

固く閉じられた瞼をそっと撫でて今にも零れそうな涙を拭ってあげる。


「はい。おしまい。もう大丈夫だよ」

「なんだか痛いっていうよりは感覚が変な感じ…」

「さっき耳は冷やしたしね。今は少しだけ腫れてるし痛いと思うけど、3日もすればすぐに慣れると思うよ」


君の綺麗な身体に、ひとつ、傷が付いた。

ピアスだしそんな大袈裟な事でもないけど、その傷をつけたのが僕なんだって思うとどうしようもなく嬉しくなる。おかしいのかな。

この先ずっとピアスとしてその証になるんだ。君が僕のものだっていう証に。これほど嬉しいものはない。

緩んでしまう顔を隠すように彼女に背を向けてピアッサーを片付けていると、腰に巻きついてくる腕。

後ろからぎゅっと抱きつかれて、柄にもなく思わず動揺してしまった。


「…月子?どーしたの?」

「んー…なんとなくくっつきたかっただけ。ダメ?」


どうして君は、そんな可愛いことばっかりするんだろう。

仮にもここは僕の部屋で、二人っきりなのに。自分から抱きついてくるなんてどうされても文句なんか言えないよ。

僕だって大事にしたいとは思ってるし、彼女のペースに合わせていきたいとは思ってるけど。


身体を捻って彼女の方に向き直る。

そっと首筋を撫でると、恥ずかしそうに目を伏せる。その仕草がまた可愛くてどうしようもなく衝動に駆られそうになる。

髪に、首に、頬に、耳に。

触れるだけのキスを落とす。


「んっ…郁、」

「ピアス」

「え?」

「ピアスが欲しい時は僕に言う事。僕が買ってあげるから」


僕以外の男から貰ったものなんて論外。自分で買うのも許さない。

君がいつでも僕を思い出せるように、僕の証として僕が買ってあげる。もっともっと、僕の色に染まっていけばいい。



不思議そうな顔をする彼女にもう一度キスを落とす。何度も何度も啄むように唇を合わせて、



「…いい?」


そう聞くと彼女は少しだけ躊躇った後、"郁ならいいよ"と言った。


僕の理性が崩壊するまで、あと、





















love is blind