全部、ぜんぶ、はじめてで。

年上の人を好きになるのも、誰かとこうして付き合うことも、手を繋いだり、触れたり、キスしたり、男の人の部屋に行くことも。

こんな気持ちになるのも、全部。

好きな人と一緒に新しいものをたくさん見つけて、新しい道をたくさん切り開いて。
こんなに幸せなことってないと思うんだ。

未来が見えなくても、自分で作っていくんだって教えてくれた人がいるから。その人と一緒に歩んで行けるのなら、わたしはなんでもできる気がする。




パチっと乾いた音がして、部屋が暗くなった。

驚いて息を呑むと、直獅さんの不安げな声が降って来る。


「ご、ごめん…驚かせたか?」

「…ちょっとだけ」

「星を見るならこの方がいいと思って」


小さく頷くと、直獅さんはカーテンを開けてわたしの隣に腰を下ろした。

ここから星空を見るのは初めてじゃないけど、どうしても緊張してしまうのは、大好きな人が目の前にいるからで。この緊張感にはいつまで経っても慣れない。

すると直獅さんは照れくさそうに笑って、わたしを抱き寄せる。

いつも直獅さんはこの至近距離でもわたしの目を見ようとしてくる。わたしが恥ずかしがってるのをわかっててこうやって顔を覗きこんでくるから、少し悔しい。

わたしばっかり恥ずかしい、なんて。


「お前は本当に可愛いな。顔真っ赤」

「…直獅さんもだよ?」

「おっ俺は、赤くなんかなってないぞ」


今度はわたしが顔を覗きこもうとすると、それを阻止するようにわたしの唇に重なる直獅さんの唇。

啄むように何度もキスを落とされて、身体が震える。

直獅さんの体温や熱が舌から伝わってきて、頭がぼーっとする。


「なお、しさん…」

「ん?」

「…っ」

「…やっぱり怖いか?お前が嫌だって言うなら俺は、」


わたしが欲しいのは、そんな声じゃないの。もっとわがままになって、わたしのことを欲しいって言ってもらいたい。

もっと、もっともっと。


「…直獅さんなら、こわくないよ」

「っお前、」

「大好きです、直獅さん。大好き…」


今度はわたしから愛しい人を抱きしめる。

直獅さんはゆっくりと頷くと、これ以上ないくらいに顔を赤くしてわたしのことを抱きしめてくれた。暗い部屋でも影が重なるのがわかった。

月明かりってこんなに明るかったかな。



触れる体温、落ちる唇、揺れる視界。


「お前は何も考えなくていいから、全部俺に任せてくれればいい。」

「うん…」


本当はね、もっともっとスキって言いたいの。気がおかしくなってるんじゃないかってくらいに。たくさん。


「好きだぞ、大好きだ」



何度も何度も。
















(ハローマイダーリン)
アルマさま素敵なリクエストありがとうございました^^