1年ぶりに訪れた神社には、大晦日から降り続けていた雪が積もっていて、冷たい風が何度もわたしの頬を撫でる。

昨日終わってしまった1年のお礼と、今日から始まる1年が素敵なものになるように神様にお願いをするため、少し町はずれの神社で部活仲間と初詣に来ていた。

日本独特の音色に、神社特有のこの空気と香り。…なんだかすごく厳粛な気持ちになる。でも心地良いな。


「おい、」

「っ!」


いつの間にか気を抜いてしまっていたらしく、至近距離で声を掛けられて思わず飛び跳ねてしまった。慌てて顔を上げると、目の前には着物姿の宮地君がいて。


「悪い、驚かせた。木ノ瀬たちはまだか?」

「う、うん。まだお願い事書いてるみたいだよ。」

「そうか…ここに居ても人が多くなるだけだから俺たちは先に戻るか?それとこれ、お守り買って来たぞ。これで良かったか?」


そう言って宮地君が今さっき買ってきた紙袋を渡される。

中にはピンク色と青色のお守りがふたつ。


「ふたつ?」

「あぁ、俺も同じのにしたんだ。お前がピンクで俺が青色」

「それって、」



お揃いだね、とは声に出せなかった。

多分こんなに意識してるのはわたしだけだし、宮地君にとってはなんてことないかもしれないし。嬉しいだ、なんてそんなこと口が裂けても言えない。



「…そんな顔して、どうかしたか?」


…いい加減、わかって欲しい。わたしが彼の一挙一動にこんなに心を乱されることを。

不思議そうにわたしの顔を覗き込んで来る彼から目が離せないのも、袴姿は部活でも見てるハズなのに彼のいつもと違う格好にドキドキするのも、お揃いのお守りが死ぬほど嬉しいのも、全部全部。

宮地君のせいなのに。


「ほら、何もないなら行くぞ」

「ん、」


触れそうで触れない距離感が縮まる日が来ればいいな。なんて思い続けてもうどれくらい経ったんだろう。

その細くて綺麗な手に触れたい、触れて欲しい、と思い続けてどれくらい。

今までこの微妙な距離を縮める勇気も、離れる勇気も持ち合わせてなかったんだ。


だから、今日はね、神様にお願いして来たんだよ。


「宮地、くん」

「…なんだ」


神様から見れば大したことじゃないかもしれないし、くだらない事を願うなって怒られるかもしれない。


でも、どうしても、今日は。

伝えたいんだ。今すぐに関係を変えたいなんて言うつもりはないし、ただ、わたしが宮地君の事を好きすぎるってことを知って貰いたいだけなんだ。


わたしにはこの4文字しか思いつかない。

この言葉に積もり積もった想いが全部、伝わればいいのに。





「…すき…です」


思っていたことを言葉に出したわたしを見て、彼の顔はこれでもかというくらいに赤くなっていく。

そしてその表情は困ったように変化していく。

軽く頭を撫でられて視線を上げると、彼の揺れる視線とぶつかった。




冬にとって雪が一瞬の出来事であるように、私たちも地球にとっての一瞬に過ぎないんだろうな。

新しい時がはじまり、わたしもその中に入っていく。

隣には貴方がいれば、何も怖くなんかないんだよ。


深く心を寄せて、心はあなたに染まれるなら、何も。
















(心ざし深くそめてし)

あけましておめでとうございます。

タイトルの意味は、最後の文章です。

宮地君の返事を書かなかったのは仕様です。みなさんの想像にお任せということです。