きっと君にはわからないんだろうけど。僕はずっとずっと、ずっと、計りきれないくらいの想いを君に抱き続けてきたんだよ。

その想いがやっと君に届いたんだ。

これ以上嬉しい事はない。もうこれだけであと100年は生きられる。ほら、ぎゅうっと君を腕の中に閉じ込めて抱きしめてしまえば、もう君は僕のもの。


「あ、の…羊くん?」

「ん?なーに?」


半年ぶりに会った彼女は、髪の毛も身長もすこしだけ伸びていて、何よりも艶っぽくなっていて、より一層魅力的になっていた。

ただでさえ会いたい気持ちが強かったのに、こんなにも可愛くなってるなんて反則だ。


「ここ玄関だよ?」

「うん。わかってるよ?」

「ふふ、お茶入れるからちょっとだけ離して?」

「だめ、もう少し」


僕の腕から抜けだそうとした彼女の身体をさっきより強い力で抱きしめると、彼女の綺麗な髪から甘い香りがした。

まだ再会して時間は経ってないのに寂しさが溢れてどうしようもない。彼女を抱きしめれば抱きしめる程、また離れ離れになるのかと思うとなんだか泣きそうになる。

アメリカと日本の距離は思っている以上に遠くて、彼女と会えない日々は思っている以上に、長い。


だから一緒にいられる時間は、ずっとずっと触れていたいんだ。


「羊くん?…ね、顔あげて?」

「ん…」


彼女の声に従って顔をゆっくり上げると、彼女の長い睫毛が鼻に触れた。

唇に感じる柔らかい感触。精一杯背伸びした彼女の不器用なキスは、1秒も触れたかわからない一瞬のことだったけど、いきなりのことに心臓が止まってしまうんじゃないかと思った。


「…びっくりしてる」

「うん…君からキスをしてくれるなんて、初めてだったから。」

「いや、だった?」

「そんなわけないでしょ、嬉しい」


僕がそう言うと彼女はふわりと満足そうに笑って、おかえりなさいと言った。僕はその小さな身体をまた腕の中に閉じ込めて、ゆっくりと息を吐く。

…どうしよう。

可愛過ぎて、どうしたらいいのかわからないなんて初めてだ。独占欲は強い方じゃないのに、こんなに可愛いと、もう誰にも見せてあげたくなくなる。


「アメリカでもずっと君の事を考えてたんだ。」

「うん」

「ずっと、ずっと、こうして抱きしめたかった。抱きしめてキスしたいって思ってた。」

「…うん。わたしもだよ」


彼女の身体からすこしだけ距離を取って、頬に唇を寄せる。そしてそのまま唇を重ねると、彼女の肩がすこしだけ揺れた。触れるだけのキスを何度も何度も。満足がいくまで。

彼女の腕は頼りなく僕の胸に置かれていて、ぎゅっと服を掴んでいる。それすら愛おしくて、もっともっと、


「羊く…っん」

「ん、」

「す、き…っ」


今だけでもいいんだ。本当は。

今だけでもいいから、僕のことだけを考えて、僕でいっぱいになってくれれば。
僕はそれだけで満足だから。



「…ふふ、ただいま。」


0.1ミリでも僕という存在が在れば、それでいいんだ。



















(明日ぼくは流星になる)