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高校最後のバレンタイン。

3年になって初めて同じクラスになった木村慧人。天然で純粋で頑張り屋で、ちょっとズレてて、そこが最高に可愛くて、すぐに好きになった。

可愛らしい外見もそうだけど、人懐っこい笑顔が女子からめちゃくちゃ人気で、慧人の周りには常に女がいて、負けずとあたしも慧人の傍で楽しい時間を過ごしてきた。


「バレンタイン、慧人に渡すん?」


大阪から引っ越してきた颯太はフレンドリーですぐに仲良くなった。人間観察が趣味な颯太にはあたしの慧人好きもバレてしまって、それ以来颯太とはこうして時々2人で慧人話をするようになった。


「…まぁ、一応。あ、颯太にもちゃんと友チョコあげるから安心してね?」
「やったー!そこ差つけるんやろ?」
「そりゃね!本命と義理一緒にしたらダメでしょ。」
「作ったらええやん、喜ぶで、慧人!」
「…うーん、キモくない?」
「キモない、キモない。俺やったら手作りがええもん!」
「ほんと?じゃあそうする!」


なーんて颯太と話したから、前日夜中までかかって作った手作りチョコを密かに隠し持っていた。

朝から慧人にチョコを渡す女が絶えなくて、それを快く笑顔で嬉しそうに受け取る慧人。まぁいいけど、分かってたけど、そういう奴って。そんな優しい所も大好きだから仕方ないけど。

でももう放課後になっちゃう。着々と慧人に渡せる時間が押し迫っていたんだ。

6限目が終わるとそのままHR。それが終われば慧人はダンス部へと移動しちゃう。チャンスはHRが終わった時しかない。でもきっとあたしみたいに慧人に渡しきれていない女達がまだいるはず。

6限目が終わる10分前。慧人の後ろの席のあたしはその背中をコツっと叩いた。


「ん?」


当たり前に振り返る慧人に、スッとルーズリーフの切れ端を渡した。そこに目を通した慧人はすぐにまたこっちを向いて、うんうんって大きく頷く。よし第1段階通過!あたしは慧人から紙を奪うとサラサラとシャーペンで文字を加えた。それをまた慧人に渡す。


「え、なに?」


すぐに読んだ慧人は読んだ感想を思いっきり口に出していて…

続くあたしの文字に「えええええっ!?こ、ここでっ!?」素っ頓狂な声を出した。それがあたしの想像通りで思わず肩を揺らす。


「なんだ?木村。」


大声を出した慧人は当たり前にクラスの注目を浴びて先生もこっちを見ている。真っ赤な顔で首を横に振ると「なんでもないです!」って。

だから私は慧人の耳元に顔を近づけて、「屋上で待ってるね。」そう言ったら慧人がおもむろに唾を飲み込んだのが分かったんだ。




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