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「俺らもみんなで歌いに来てて、ね、よかったら1曲聴いてってよ、俺の歌!結構自信あるんだー!ね、ね、」


強引に腕を掴んで部屋に連れ込む北人に、ジンジャエールを残したまま、北人達R高の部屋に連れ込まれた。

…とと、美形を見慣れた私でも結構ビビるわ、こちらも。


「樹と、慎と、陸さん。」


知ってる。青山だけはあの朝海の1件で顔と名前が一致してる。もちろんながらあちらも同じで。確かにあの日朝海と健太くんの交際がバレてこの陸とうちの黎弥がタイマンを張った。ほとんど互角の2人だったけど、なんとか黎弥の勝利でR高とF高との争いを崩した。

そもそもの事の発端が黎弥の私を守る予防線だったみたいだけど、こうなる事を黎弥はきっと望んではないよね。


「瀬口?」


北人をガン見する陸にケロっとした顔で「ゆき乃。…今だけ俺の女!」ニッコリ微笑む北人に苦笑い。

揉め事をしないようにって掟を廃止したものの、生まれた敵対心はそう簡単に消えるものでは無い。


「北人、私やっぱり…、」
「なんで?いいじゃん!ね、陸さん!今だけ俺の女だよ、ゆき乃は。」


ドアの前に立って私が出ようとするのを塞いでいる。困ったな。喧嘩っ早いなっちゃんに見つかったら大変だ。生憎今日に限って健太くんとデートの朝海以外全員揃ってる。

でもイントロが流れ出してマイクを持った北人がしっとりとバラードを歌い始めた。

勇征とはまた違う綺麗な声にちょっとだけ聞き惚れる。そんな私を満足気に見つめる北人。


「ねー。本当に北人さんの女なの?」


プランとした私の手をキュっと握ってそう聞くインナーカラーの慎。隣の樹も大きな目をこちらに向けていて。だから私は首を横に振る。


「なんだやっぱ嘘じゃん。」
「…うん、冗談のつもり。北人も冗談で言ってるんでしょ。」


そうじゃなきゃ困る。だけど私の傍に来た北人は肩をグッと抱き寄せて耳元で「ね、もう少しここに居て。」…猫みたいに甘えるように綺麗な頬を擦り寄せる。だけど次の瞬間、「北人、瀬口から離れろ、」言ったのは青山で。廊下から思いっきりこの部屋を覗き見している勇征が私を見て目付きを変えるとドアを勢いよく開けた。


「気安く触ってんじゃねぇぞ、R高。」


稀に見る勇征のド低い声と据わった目。ズカズカ大股で歩いて来た勇征は迷うことなく私の腰を掴んで北人から剥がした。


「勇征、」
「ゆき乃が戻ってこないから心配で。」


それだけ私に伝えると北人を思いっきり睨みつける。でもその横で青山も一瞬たりとも目をそらすことなく勇征を見ていて。


「吉野、ゆき乃にストーカーすんの今すぐ辞めろや。じゃなきゃ俺が許さねぇ。ゆき乃は俺んだから。」


そう吐き捨てるとそのまま私を連れてこの部屋から出た。


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