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「さっきの、彼氏?」


ベンチに座った私に暖かいミルクティーをくれる泣きボクロ。ぶんぶん横に首を振る私にニッコリ微笑むと「それ、俺にちょうだいよ?」お弁当を指さしている。


「え?これ?」
「そ。どーせ食べないんでしょ?」
「…うん。あげる。」
「ラッキー!めっちゃ腹減ってて。」


私の膝の上から奪い取ると袋から取り出してパカッと蓋を開ける。でも次の瞬間泣きボクロは爆笑してて。


「え、可笑しい?」
「…ん、まぁ。だってこれオール肉弁?俺こんなの初めて見た!」
「だって勇征は肉が好きだから。」
「それにしても、極端だよね。瀬口ゆき乃ちゃん。」


名前を呼ばれてバッと身構える。やっぱり顔バレしてんの、私。

F高トップである黎弥の双子の妹の私を知らない奴なんてR高にはいないのかもしれない。


「安心して。陸さんのとこに連れて行こうなんて思ってないから。正直俺、そーいう争いごと嫌いだし。面倒だし。喧嘩なんて殴る方も殴られる方も痛いしするつもりもないから。ね?」


たぶんこいつが言ってることは事実で、私をどうこうするつもりはないんだって思った。こんな事、なっちゃんや黎弥にバレたら絶対に怒られるって思うけど、この人はR高が持つ独特のヤンキーオーラがほとんどなくて、普段あの人達以外とは大して喋ることの無い私でも、話しやすかったんだ。


お弁当を一粒残さず食べてくれた赤髪泣きボクロの北人。



「…また食わせてよ?すげー美味かった。」
「…うん。」
「家まで送るよ!俺の愛車で。」


公園の横に隣接された市の施設の駐車場に止まった銀色のバイク。見かけによらずかっこいいの乗ってるんだ。


「北人の彼女に怒られない?」


制服の袖を引っ張る私を背中越しに見下ろした北人は、「いねぇよ、女なんて。…なんならゆき乃が俺の女になる?」なんて冗談。ほんのり目を細めて笑う北人の背中に後ろからキュッと抱きついた。


「じゃあ今だけ北人の彼女になってあげるね。」


冗談で返す私の頭をポンポンって優しく撫でる。バイクの後部座席には乗り慣れているからか、いつもみたいにギュっと抱きつくと北人が息を呑んだ気がした。


誰にも知られることなく私は初めての友達って感覚の北人との出会いを嬉しく思っていたなんて。





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