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翌日のお昼休み。意気揚々とお弁当を袋から取り出した私。いざ勇征にって思ったものの何故か勇征の姿は教室になくて。廊下にひょこって顔を出した私の目に飛び込んできたその光景。

澤くんのお気に入りの寧々ちゃんのお友達なのか、隣に寧々ちゃんをはべらせた後輩は勇征にお弁当を手渡した。勢いで受け取った勇征は「えっ!?」素っ頓狂な声を出している。

勇征がモテるって分かってた。重々知ってたはずなのにすんごいモヤモヤして私は勇征が教室に入るのと同時、後ろのドアから廊下に出た。

5時に起きて作った勇征のお弁当。たったそれだけ持って学校から出てきちゃった。

黎弥みたいに素直にアプローチできない自分が嫌い。こんな事で一々勝手にヤキモチ妬いて傷ついてる自分も大嫌い。

だけどその時だった、「ゆき乃っ!」叫んだ勇征の声と物凄いスピードで全力疾走してくる勇征が見えて、タイミングよく目の前に止まったバスに乗り込んだんだ。


「運転手さん、早く出して!勇征来ちゃう!」


慌ててそう言うと苦笑いでバスの運転手が発車させた。



「おいっ!待てよっ!ゆき乃返せやっ!」


運動神経抜群の勇征も、さすがのバスには追い付けず角を曲がるともう勇征の姿が見えなくなった。

途端に寂しくなった私の目に飛び込んだのはR高の学ランと紋章。ヤバいこれ敵陣のバスだった!

みんなすんごい目付きで私を見ている気がしてくるりと背を向けた。

次の駅で降りる?でも一駅ぐらいなら容易に走り込んでるだろう勇征を思うと降りれなくて。そうこうしているうちに終点で止まった。ブレザーのポケットに手を突っ込むも、出てきたのはハンカチタオル1枚のみ。


「嘘、スマホ忘れた。」


お金、ない。どーしよう。なっちゃんどうしたらいいの?涙目で立ち尽くす私の後ろ、「二人分で。」そんな声と私の背中を押す手。


「え、あの、」
「いいから。」


見ると真っ赤な髪色の泣きボクロが優しく微笑んでいた。制服も紋章もR高のものだったけど、今この人を頼るほかないって。

F高にはいないタイプの泣きボクロの後をトボトボ着いていくと、小さな公園に入った。


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