HANABI | ナノ


▼ どっちがズルイ?

しばらくの間ずっと後ろ手で隠して恋人繋ぎをしていた勇征は、不意に黎弥に話しかけられてスッと手を離した。

まるでなにもなかったかのように。

ポツンと一つになった私の手がほんのり寂しさを覚えたなんて。

でも私の手について離れない勇征の香水にほんのりドクンと胸が高鳴る。

それでもこのどうにもできない気持ちを表に出せなくて、そんな私に気付いたのか夏輝くんがポンって頭を優しく撫でた。


「疲れてない?平気?」


相変わらず優しいなぁって。翔太くんと夏輝くんはいつだって優しくて頼れるオコトだと思うの。


「全然。夏輝くんこそ運転変わろうか?」
「いいよ。ゆき乃はほら、助手席専用でしょ?」
「…うん!!」
「俺の隣も空いてるけど?」
「え?またまた冗談を。夏輝くんの隣なんて私には。はぁ〜お腹空いた。美月なんか食べ、あ…マジか。」


もう既にチーズドックの方へと歩いていた美月と颯ちゃん。

これはさすがに邪魔できないよね。

なんだかんだで美月も二人きりになってしまえば素直に颯ちゃんの事、ちゃんと見てる…のかもね。

カウンターに並んで注文した2人。

一個のチーズドックを2人で食べていて…あれで颯ちゃんが美月に好意を持っていないなんてこの期に及んで言うもんならちょっと色々疑っちゃうけど、そんなことはなさそうで嬉しい。

てか私も食べたいよ、チーズドック!!


「食う?俺らも。」


言ったのはなっちゃんで。見上げた先チーズドックを指さしている。

だから「うん!食べたい!」そう言うと「んじゃはい。」これまた強引に私の腕を引いてそっちに誘導していく。


「花火大会さ、浴衣着るの?」
「え?うん。一応持ってきたよ。」
「ほんと?じゃあ俺も着る。」
「男子の浴衣ってあんま見ないよね?楽しみ…。」
「…それと、どっかでゆき乃さんと2人きりになりたい…って思ってる。だから考えといて。」


…勇征みたいな確定事項じゃなくて、私に考える時間を与えるなっちゃん。


これってどっちがズルイの??


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