▼ 女の守り方
「あ、いたいた!美月ちゃん、一緒にチーズドック食わへん?」
茶髪にして垢抜けた颯ちゃんは細身だから一見小柄に見えるものの、見た目より身長が高くてそのギャップに近くに来ると私でもドキッとするなんて。
「え、うん。いいけど。」
颯ちゃんが笑顔で誘ってるのに対して素っ気なく答える美月に翔太くんと2人爆笑。
「なんだありゃ!」
「嫌われたいの?あの子は。」
「まさか!愛情の裏返しだよね、もう。」
小声で話してたつもりだけれど、美月には聞こえていたみたいで、プンプン顔を左右に振っている、やめて!って表情で。
残念だけどやめてあげない。
「美月の恋愛論を聞いてる限り、好きな相手ほど素直になれないんだよねぇ。」
翔太くんにそう言ったつもりだったけど、気づくと私の横には、颯ちゃんと同じ1年の木村慧人くん。
「美月ちゃんて、颯太狙いなの?」
何故か私の腰に回っている腕。えーっとこの距離違う。友達の距離じゃない。これは完全に恋人の距離だ。
「慧人くんこら、近いぞ!」
あえて明るくさり気なく慧人くんの腕から抜けようとするも、思いの外がっちりホールドされててダメで。
プルプルの唇を動かして「ゆき乃さんいい匂い。」なんて言いながらぎゅうーって抱きしめてきた。
ぎゃあああああ!!!!
「慧人やめろ。」
言ったのはなっちゃんで、私の腕を掴んで自分の後ろに隠した。
なっちゃんてこーいう事するの!?何この守り方、死ぬ程かっこいい!!
なんて見とれていると私の髪をクシャって撫でて「ゆき乃さん見すぎ。」ポコッて顔を逸らされたなんて。
よく見ると耳が赤くなっていて、え、照れてる!?
急になっちゃんが、可愛く見えるなんて。
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