Summer | ナノ


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「マサ、やましょーどう?」


バイクを降りて2人で繁華街をプラプラ歩きながら小さく聞いた。

当たり前にうちのチームは薬なんて禁止だけど、やっぱりそっちに手を染めてしまう子もいて、そんな時私はいつだって蚊帳の外で。

健太が言った「廃人」が、頭から離れなくて。

不意にマサが私の手をキュッと繋いだ。


「禁断症状がでなきゃいつものやましょーさんで。でもあかん。禁断症状と幻覚がくると、俺ら男でも吹っ飛ぶぐらい暴れんねん。だからやましょーさんの両手両足は、傷だらけで…。3日ぐらいなんもないこともあるけど、ちょっと安心すると4日目に禁断症状が出てまたふりだしやって、」
「…そう、なんだ。…でもマサ、やましょーに会いたい。」


ギュっと繋がれた手に力を込めると首を横に振る。


「それだけはできひんよ、ねぇね。女は絶対見ぃひんでほしい。」


さすがに姉の頼みでも、無理なもんは無理だよね。あまりにマサが切ない顔をしたからそれ以上もう何も言えなくなった。


「うん、分かった。とにかく早くこの問題解決しなきゃ、健太とネコが離れちゃ、―――え、」
「ねぇね?どしたん?」
「あれ、ネコ?」
「え?ネコ?」
「そう、ネコと―――――」


言葉にするのも嫌で。だってそれはまさに私が恐れていた事。もしかしたらいつかこんな風になってしまうのかもしれない?って心の片隅にあったけれど、実際それを目にするはめになるなんて。


「未来!?」


マサのド低い声に、マサの腕を全力で掴んでそこに抱きつく。だって今にも走ってそっちに行ってしまいそうだから。

こんな事、健太にバレたら、健太の耳に入ったら本当に終わってしまう。



「絶対に健太には言わないって約束して?」
「…なんで?」
「ネコを信じてるから。分かってたよ、未来がネコの事いつだってそーいう目で見ていたのは、それでもネコは健太の女だから。どんなに他の男に想われたって、ネコは健太の女だから。これ以上健太のこと傷つけたくない。私とマサが黙ってればいい。わざわざ健太傷つける事しなくていい。」


そこに居たのは紛れもなくネコと未来。そしてここは繁華街の路地裏。一本奥にあるのは、歓楽街。その一角に手を繋いで寄り添うみたいに消えて行った2人の残像が頭にこびりついて離れない。

何かが、ガラガラと頭の中で崩れていくような感覚だった。




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