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「はい。」
『あ、堀です。お疲れ様です。あの今話、大丈夫ですか?』
「うん。」
ちょっとしどろもどろしてるのが初々しくてほんのりこちらも頬が緩んだ。
『何って用はないんですけど、ちょっと声が聞きたくなって。』
堀くんの口からそんなロマンティックな言葉が出てくるなんて思いもしない。いつもはクールに見えるせいか、そのギャップに胸がキュンとなる。
「へぇ可愛いとこあんじゃん、堀なつ。」
「ね。いがい!」
いやいや黙れよお前ら。喋らねぇって言ったじゃねぇか!!ジロっと睨むと気にすんなって顔で頭を一撫でされる。
「…堀くん可愛いね。」
『…ゆき乃さん、…逢いたい。顔、見たい…。逢いに行ったら迷惑、ですか?』
うそ、今から!?耳をスマホにピッタリくっつけて聞いている臣が勢いよく親指を立てる。GO!って、行け!って。隆二が「なになに?」って臣に聞いていて。「堀なつ逢いたいって言ってる!」だからさ、喋らないんだよね?2人。これ堀くんに聞かれてたら最悪なんだけど。
くるりと2人に背を向けてごほんと喉を整える。
「堀くん今どこにいるの?」
『あ、まだ会社で。ちょっと資料足りなくて残業してまして。これから帰ろうかな?って思ってたんですけど、先にゆき乃さんの声聞いてからって。』
時計を見ると9時を少し過ぎた所。トクンと胸が脈を打つ。チラリと臣と隆二を見ると笑顔で手を振っている。
「私近くにいるの。今からそっち行くね!」
『えっ!?マジっすか!?』
「うん、5分ぐらいで行ける!」
『やべ、めっちゃ嬉しい。』
…いざ実践!とまではいかないけど、この胸のトキメキを彼に会って確かめたいって思ったなんて。
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