▼ ネコの洞察力
隆二はああ言ったけど、不器用で強がりで素直じゃない私はその言葉を右から左へと聞き流す事しかできなくて。それでもそんな私がモヤモヤしないようにって心の中の汚いもの全部を吐き出させてくれて、受け止めてくれたんだ。
だから、少しだけ気持ちが軽くなった翌日、いつもなら元気よくフロアに入ってくるネコが元気の無い事に気づけなかったーーーー。
「ゆき乃、おはよ!今日から一人新しい子入ってくるよね?」
「ナオくん、おはよ。うん研修お願いします。」
ニッコリ微笑むとちょっとだけ照れたように笑い返す。
「なんか今日はいつもより可愛いね。いい事あった?」
「隆二くんと飲みに言ったでしょゆき乃さん!ズルいよー。」
私のインスタを開いたままその画面をこちらに見せるネコ。確かにインスタあげたけど。
「えっ!?なんで隆二って分かったの?顔は写してないけど。」
「分かります。この煙草。」
「あー…。」
出てきたディナーの片隅、そこに写っている隆二の煙草。タグは#優しい同期。としかつけてないのにさすがはネコ。
「…俺を誘ってくれりゃよかったのに。」
直人が私の肩に手を着いてがっくし頭を下げた。
「ナオくんはネコと二人でディナーだったでしょ?健太はどうしたの?ネコ、」
「…知らない。」
プイッと顔を背けるとそのまま自席についてパソコンの電源を入れたんだ。
直人と二人、目を合わせて首を傾げる。
「喧嘩?」
「拗ねてるだけだろ。昨日カミケンにフラれて俺と飯に行っただけだから。ゆき乃もそこ、誤解すんなよ?」
…自分の事にすり替える直人にちょっとだけ笑った。
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