帰路

「あーーーつかれた」

帰ろうとしたら担任に呼びとめられて。仕事の手伝いさせられて。
また帰ろうとしたら部活中の友達に呼びとめられて。荷物運び手伝わされて。
また帰ろうとしたら事務のおじちゃんに呼びとめられて。なぜか一緒に掃除をして。
帰ろうとしたら、外はすでに真っ暗だった。

「こんな予定じゃなかったのにー」

はあ。思わずため息が出た。
わたしの予定的には、HR終わったら速攻で家に帰って昼寝してご飯食べてお風呂入って先週の日曜日に撮ったお笑い見て早く寝ようと思ってたのに。
確実に昼寝は諦めなければならない。確かお笑いのテレビ2時間スペシャルだったはず…ってことは全部見ちゃうと寝る時間が少なくなっちゃう。あーーどうしよ。

必死で考えてたら誰かにぶつかった。

「いで」
「おい」

顔を上げると跡部がいた。

「あ、あちょんべだ。」
「誰があちょんべだ、誰が」
「あなた以外誰がいるのよ、誰が」

暗いけど眉間にしわが寄っている跡部がしっかり視界に入った。
そんな怒らなくとも。

「なんでこんな時間まで何で居るんだ、アーン?」
「こっちにだっていろいろあったのよ。なに?跡部は部活?」
「まあ、そうだな」

確か引退してるんじゃ。とか思いつつも面倒なので口には出さない。

「なに、どしたの?今からご帰宅?お迎え待ち?」
「帰るが迎えは来ねえ」

なまえは目を丸くして驚いた。

「天下の跡部様にお迎えが来ない?!」
「馬鹿にしてるだろ、てめえ。…ランニングして帰ろうと思って呼んでねえんだよ」
「まあ、頑張るね」

しみじみと同情する。別に同情する必要など全くないが。

「じゃ、わたし帰るから」
「ああ、じゃあな」
「…普通『女一人暗い夜道は危険だ、俺様が送ってやろう』って言うもんじゃないの?」
「お前を襲うやつなんていねーだろ」

コイツ超失礼なんですけど。

「いいし、別に送ってなんて言ってないし」
「なんだ、素直じゃねーな、言ってほしかったのか?なら言ってやるよ。送ってやろうか?」
「いや、いい」

はあ?と更に眉間にしわが寄る跡部。

「あっはっは!変な顔!」
「何様だ貴様」
「なまえ様よ」

ふんふ〜ん、と鼻歌を歌いながらバッグを振り回し正門へ向かうなまえ。

「ほんとに一人で帰るのか?」
「当たり前でしょ?それくらい一人で帰れますー」

くるりと跡部に背を向けたところでがしっと腕を掴まれた。

「送ってやるよ」
「はい?」
「だから送ってやるって言ってんだ。聞こえねえのか」
「……明日雪降るね」
「はあ?」


帰路 
(跡部さむーい、帰り肉まん奢って)(…、今から中華街行くのか?)(…え?)


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