Accident 3

「ただいまー」

引越ししたての木の匂いでいっぱいの新居に足を踏み入れる。靴を脱ぐときちんと揃え、鍵をかけてリビングへとかけて行く。お母さんはご飯の準備をしているところだった。


06



「おかえり、学校はどうだった?」
「めっちゃ広くてびっくりした」
「噂通りなのね。今日お父さん帰ってくるの早いみたいだからご飯の時間お父さんに合わせていい?」
「いいよー」

はるこは部屋着に着替えると「じゃあご飯の時降りてくる」と自室へ向かった。新しい教科書をまとめ、時間割を机の前に貼り、明日の授業の準備をする。椅子に深く座りなおし携帯をいじり始める。
外が少し暗くなってきた頃、リビングからお母さんの「ご飯よ〜」という声が聞こえる。家族3人で楽しくご飯を食べる。テレビを見てお風呂に入って眠りに就く。それがはるこの日常だった。

そんなはるこの日常が変わってしまうなんて予想できたはずが無かった。



翌日、学校へ行くと昨日なんとなく話したクラスメイトたちと挨拶を交わす。名前は覚えてないけど。
自分の席につくと隣の席の宍戸は既に来ていた。
「宍戸くんおはよ」
「おー、はよ」
「早いんだね」
「朝練あっからな」
あーなるほど、はるこは相槌をうつ。
みんなうまかったし全国レベルの跡部くんがいるとかなんとか言ってたしそりゃ朝練くらいあるんだろうなあ。強いとこほど練習厳しいってやっぱいうもんね。やっぱわたしに体育会系の部活は向いてないなー。
「それよりさ…お前、今日も来ねえ?」
どこに来いと言われているのかはるこにはすぐにわかってしまった。
「テニス部に?なんで?」
「や、まあ…暇だろ?」
「勝手に人のこと暇って決めつけないでくれる?わたし超絶忙しいんだ。今日なんて家に帰ってテレビ見てご飯食べてお風呂入って寝なくちゃいけないんだから」
「…要するに暇じゃねーか」
「うるさいなあ、少しは多忙人ぶらせてよ」
ほんと、だから彼女が出来ないんだって何回言わせるつもりなんだこの男は。
「理由は?」
「……」
「言えないの?」
「…すまねえ」
宍戸くんが理由も言えないけどわたしにまたテニスコートに来て欲しい…?よくわかんないけど、なんかものすごく困った顔してるし…困った時はお互い様、だよね…?
「ま、ほんとは暇だし、いいよ」
「まじか!」
「なんかすごい困った感じだし」
「いやまじで助かる」
「ただし貸し1だから。なんか後で奢ってもらうからね」
「なんでも好きなの奢ってやるよ」
宍戸くんは今まで(って言っても2日間で、だけど)で見たこともないような笑顔を見せた。いやもしわたしが宍戸くんと出会って1ヶ月になってもこんな笑顔見ることはきっと無かったと思うけど。
「なんか笑顔が気持ち悪いんだけど…」
「気にすんな気にすんな!じゃ、」
宍戸は席を立ち教室を後にした。
ってかあれ?今から授業じゃないの?って思ったら宍戸くんは慌てて教室戻ってきた。席に勢いよく着いたと思ったら「今、完璧、俺、放課後と勘違いしてた」って言ったので、一際笑ってやった。


放課後になり、宍戸たちと一緒にテニスコートに向かったはるこは昨日と違いやたら部員の視線を感じた。
「…ねえねえ、なんかやたら視線が気になるんだけど?」
「気のせいだ」
「いや気のせいじゃないと思うんだけど…」
「はるこちゃーーーん!」

げ。またもこの声、いやな予感。

声のする方に視線をやると、予想通り忍足が走ってきた。
「なに」
「なにやないわ〜ほんま冷たいなあ」
「はあ」
「それにしてもはるこちゃん来てくれたん!よーほんま来てくれたわ、おおきに」
ここではるこは宍戸をきっと睨んだ。
「ねえ、宍戸くん」
「あ?」
「朝からずっと思ってたけどやっぱ変じゃない?なんでこんなに感謝されんの?おかしくない?」
「え、はるこちゃん理由聞いてへんの?」
「わたし何も知らないよ」
「宍戸…お前言わんと連れてきたん?」
「だって言ったら確実にこねーだろ!昨日こいつ印象最悪的な感じだったし」

なになになに。
わたしは一体なにに巻き込まれてるの。目の前では忍足と宍戸が口論している。どういうことだ。
はるこはいやな予感しかしなくなり、その場を静かに去ろうと忍足と宍戸の姿を見ながら後退していった。ら。

ドン

誰かにぶつかった。
「あ、すみませ…」
「アーン?おい、忍足、宍戸、昨日のやつってこいつのことか」

昨日見た独裁政治家がわたしの真後ろに立っていた。



*
でたあ(棒読み)


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