Accident 2

「集合!」

その男が声をかけると今までバラバラだったテニス部員たちはすぐさま集合した。統率力があるという言い方をすればいいのだろうが、はるこにはその光景は独裁政治にしか見えなかった。
現代の、ヒトラーや…。


05



ひとまず、テニスコートにこのままいてはまずいと思ったはるこは誰にも気づかれないようコートから出た。女の勘ってやつだよね。あのままいたらあの黄色い声集団全員敵に回してた気がする。少し悪寒がした。しかしそのまま帰るのは宍戸達に悪いのであの女の子たちと同じようにフェンス越しに彼らの姿を見ていた。

「以上が業務連絡だ。それでは今日の練習に取りかかれ」
「はいっ」
もんのすごい体育会系、っつかまじあのトップえらそー。イケメンだけど。いやけどまじえらそーあんまり関わりたくは無いよね。イケメンだけど。
「高橋?」
いやほんとイケメンだな。でも髪の毛整いすぎだし、あれ絶対1時間ごとに髪の毛チェックしてたりするでしょ。ナルシストはわたしは無理、パス。
「高橋!!!」
「え、わ、なに?!」
一人勝手にテニスコートの中心人物の勝手な妄想を脳内で繰り広げていたはるこは宍戸に呼ばれ慌てた。
「ちょっとニヤけててキモかったぜ…」
「宍戸くん、そういうことは思ってもレディーの前では言わないことね。彼女出来ないわよ」
「るせー、ってかどうしたんだよコートの中で待ってりゃよかったのに」
「いや、女の勘でテニスコートの中にいるなと」
ばれないように女の子の集団を指さすと宍戸は感心したように「状況察知がいいじゃねーか」とはるこを誉めた。誉められたことに大して悪い気のしないはるこは「まあね、」とドヤ顔で相槌をうった。
「とりあえず、関わることねーかもしんねえけど一応説明しておく」
「お、おお…」

宍戸くんから聞かされた話はこうだった。
あの女の子たちからキャーキャー言われていた中心人物(ヒトラーくんね、というと宍戸くんにはあ?って言われた。そりゃそうか。)は跡部景吾というらしい。この氷帝テニス部の部長をしていて強さも全国レベルなんだとか。
ここまでは普通に聞いてたんだけどここからが本題。父親が年商兆越えの大手企業の社長らしくて、おまけに一人息子。見た目はいいかもしれないけど性格が超超超俺様らしい。あと試合のときとんでもなくセンスの無い(宍戸談)応援コールを自分で考えて人に言わせてるとか。
もうなんか想像してた通り過ぎてそれを聞いて涙が出るほど笑うと宍戸くんに「あいつ見て女で笑ったやつなんて初めて見たぜ」って変なもの見る目で見られた。だって見た目通りすぎて面白すぎない?わたしだけ?そんなはずない!とりあえず宍戸くんが何が言いたかったかと言うと、その跡部くんは「跡部様親衛隊」があるほどファンがめちゃめちゃ多いらしいから気をつけろってことだった。たしかにファンの前で跡部くん笑ったらわたし明日から学校行けなさそうだしな…。先に聞いておいてよかった。宍戸くんに「ありがと」とお礼を言うと「帰るなら止めねーし居るなら練習見てても良いぜ」と言い残して練習に戻って行った。

とりあえず帰ってもすること無いしせっかくだから見ていこうと思い、フェンス越しに彼らの勇姿を見届けることにした。練習とは言え、彼らの姿を見ているとそこまでテニスに詳しくないはるこでもうまいことがわかった。1時間くらい練習風景を見ていたがさすがに飽きて帰ろうと思い立ちあがるとジローと目が合った。ジローははるこが帰ろうとしていることを察して手を大きく振ってきた。
「ジローくんは相変わらずかわいいなあ」
はるこはにへらっと笑い小さく手を振ると足早にコートを後にした。

「あれ、高橋帰ったの?」
次に気がついたのは岳人だった。
「うん、さっき俺ばいばいしたC−!」
「えーなんでゆーてくれへんかってん!」
「なんでそこで侑士が悲しがるんだよ」
「え、高橋先輩帰ったんですか?」
「帰ったらしいわ。残念や。帰りにご飯でも一緒に行こうか思たのに」
「高橋帰ったって?」
「何回言わすねん、帰ったわ」
「まあ。帰っても良いって言ったしな」
「なんでそないな勝手なこと!」
「帰ろうが帰るまいがあいつの勝手だろ?」
「そんなんやから宍戸、お前には彼女できんねん」
「なんでそう1日に何回も彼女出来ねーっていわれなきゃなんねーんだよ!」
ぎゃあぎゃあと騒いでいると「おい」と後ろから声がした。全員が恐る恐る後ろを振り向くとそこには跡部が立っていた。

「お前ら、さっきから誰の話で盛り上がってんだ?」

*
ご本人登場。


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