I can not be honest yet

月日は流れ、少し学園生活に慣れてきたころ、跡部からラインが届いた。
「明日空けとけ」
まあ、なんて偉そうなお言葉。
そう思いつつはるこはそのそっけない偉そうな誘いに対しすぐに返事を打ち始めた。
「明日は友達と遊ぶので無理」
…、文句言うあとべが目に浮かぶわ。

27


電話かかってくるかなーって思って送信ボタン押してみたら案の定電話がかかってきたもので、無視するとすぐにまたラインが入った。
「友達より恋人を優先させろ」
うわ、更に偉そうなライン来た。面倒くさいので返さなかったらこんどは直接教室にやってきた。あーあーめんどくさい。
「おい、はるこ!」
このクラスではまだ許容されているものの、外で跡部に絡むことは極力したくないはるこ。いつどこで跡部様うんぬんかんぬんの事件に巻き込まれてもおかしくは無い。ということではるこは跡部の呼びかけを華麗にスルーした。
しかし、そんなスルー、通用するわけがない。
「お前は何無視を決め込んでるんだ」
はるこの机のところまでくるとバンと机を叩き、わざわざ人が教科書見てるふりしてるところに覗きこんできた。
「学校内であんま話しかけてこないでって何回も言ったと思いますけど」
あまり騒ぎにしたくなく小さな声で返事をする。
「それより返事は?Yesだな?」
「だから友達と遊ぶって言ったじゃんー勘弁してよあとべちゃーん」
はるこはすかさず慈郎の元へかけよった。
「ジローくん助けてーあとべがいじめるー」
「跡部!俺のはるこいじめるとか許さないC」
「おいお前のじゃねーだろ」
「わーったから、話は放課後にしろよ」
そして宍戸が仲裁をする。
ここ数日、こんなやり取りが何回か行われていた。
当然おもしろくない女子だっている。みんながみんなはること跡部の交際を応援している訳ではもちろんない。しかし跡部が隙を見せるなんてことは絶対に無かった。はるこに何か言いたくても必ず跡部側の人間が側にいるとあっては手を出すにも出せず、だんだん自然と諦めていく事を選ばざるを得なかった。

跡部が自分の教室に戻ったことを確認した後宍戸ははるこにボソッと話を切り出した。
「けどよ、お前ら結局まだデートしてねーわけ?」
ギクッと聞こえた気がした。
そう、確かに何度も何度も、それはうっとおしいくらいにデートには誘われている。跡部はむしろ2人きりに早くなりたくて仕方がないのだ。しかしどうも2人きりになってしまうとなんだか本当に惚れたことを認めてしまいそうではるこはなかなかふんぎれずにいた。周りからすれば素直になってないだけ、とのことだったがはるこにとってはそこが一苦労なのである。
「うるさいなー宍戸くんには関係ないじゃん」
「関係ないけど毎度呼ばれる俺らの身にもなってくれ」
そう、2人になりたくないからと毎度毎度呼ばれる氷帝レギュラーズ。練習からやっと解放されたプライベートタイム(とはいえ今のところ数回だけなのだが)をほぼこの2人の時間へと当てられていたのである。まあそれも悪くないか、と思うメンバーばかりではあるが、意地悪に宍戸ははるこに向かってそう言った。それを真に受けてしまったはるこは真剣に悩んだ。

そっか、わたしのワガママでみんなの時間をつぶしちゃってたのね。けど2人きりはやだし。あとべはああは言ったものの、ほんとに男が獣になるのなんて一瞬のことだからね。ほら昔ピンクレディーも言ってたじゃない。けどそれでみんなのプライベートタイムが潰れちゃうのもなー…宍戸くんの「もっと練習したいから呼ばれんの邪魔だ」っていう遠回しな言い方なのかなあ…うーん。困った。それならもうわたしとあとべはしばらく学校以外で会わないほうが良いんじゃないかしら。でもこんな事言ったら引くほど怒られそうだな、本当に困った。

真剣に悩むはるこを見て宍戸は少し申し訳なくなる。
「あの、高橋?」
「ん?」
「そんな、悩まなくても…あの、別に気にしてねえからよ」
「うん、ごめんね。やっぱりわたしあとべとしばらく会うのやめる…え?気にしてない?」
ちょっとどういう事…と宍戸に対し切り出すはるこなぞ気にせず始業を告げるチャイムはなる。クラスメイトたちは一斉に自分の席に座り出し先生も教室に入ってきた。宍戸は顔の前で両手のひらを合わせて「すまん」と口ぱくではるこに伝えた。
はるこはルーズリーフを小さくちぎり、
「次の休み時間、問い詰めます」
とだけ書き記し、にこやかに宍戸にそれを渡した。宍戸は苦笑いを返すと、もう一度「すまん」と謝った。

というかあいつ、俺らが行かなきゃ跡部と会わねえ選択肢するのかよ。
恋愛に無頓着な宍戸ですら跡部を少し不憫に思った。


*
I can not be honest yet=まだ素直になれない


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