Call me by my first name

一人寂しそうな(※はるこ談)跡部を仲間に加え、はることゆかいな仲間達は協議の結果、結局跡部の家へと行くことになった。
「とりあえず跡部と2人きりでデートするんが嫌やったってことでええんやんな?はるこちゃん」
「前回の事があるんで」
跡部に若干の協力をした忍足は黙ることしかできなかった。

22


「うっわー!噂では聞いてたけどほんと跡部くんちでかいんだねー!」
「おい、」
「こんなに大きな門だなんてスゴーイ!というか呼んだ?」
「さっき散々話題になってたから俺からも言ってやろう、『跡部くん』ってなんだ」
「は?あなたの名前じゃないの?」
ついに自分の名前すらもわからなくなってしまったの?
「そういうんじゃねえ『くん』なんて必要ねーだろ」
「はあ…じゃあ跡部」
「違う。お前は俺がたった一人にするほど気に入った女だ。ファーストネームで呼ばせてやる」
「え、結構です…」
はるこが真顔で答えた瞬間耐えきれず忍足と宍戸と岳人は吹き出した。
結構ですって…!
「断るとかじゃねーよこれは義務だ」
「そんな義務聞いたこと無いってば」
「俺様が今決めた」
「いやだから呼ばないってば、あ、なに?跡部くんだと他人行儀だって言いたいの?」
「そうなんじゃね?跡部こう見えて寂しがりなんだよククッ」
「そーそー、『けいご』って呼んでほしいんだってよ」
宍戸と岳人が後を押す。にこにことするはるこは
「じゃあニックネームでも決めてあげるよ」
と自信満々に考え始めた。考え始めたというかものの3秒で、跡部に指をさした。
「あちょべちゃん、とかどう?かわいい?」
「?!」
今、なんて?
「ほら、アシベくんみたいでかわいいじゃん?あ、あちょこちゃんとかも可愛さあっていいと思うんだけど、どう?」
「……」
言葉が出ない跡部、笑いを堪え切れず腹を抱えて死ぬほど笑う忍足と宍戸と岳人。どうしていいか分からず苦笑いしか出来ない長太郎。とりあえず周りを見渡しニコニコする慈郎。そしていつもと変わらずの樺地。
「なんで黙るのあっちょろべー。ねえ、わたしすっごいニックネーム作るセンスあると思うんだけど」
「……、好きにしろ」
そのあともはるこのニックネーム制作は止まらず、玄関に到着するまでの間に一番はるこが気に入る事になったニックネームは「跡部ートーベン」だった。

「ねーねー跡部ートーベン!」
「なんだ」
最初はとってもとっても(すごく感情を入れて)受け入れがたかったものも、いくつも妙なニックネームばかりで呼ばれているとさっきのよりマシか、と謎の慣れを発揮し、この数分という短期間で妙なニックネームに対しては普通に返事できるほどに鍛え上げられた。
そういう心の広さ!さすが跡部様!と周りに茶化されても跡部は耐えられるほどの精神力に鍛えあげられていた。

大きな玄関を通り抜け幾つもの部屋を横切りようやく跡部の部屋に到着した。
ほんと、ここ、いくらあれば建てられるの?

「入れ」と言われて入った跡部の部屋は意外にとてもシンプルだった。
趣味の悪い置物などが無く、はるこは少し安心した。
忍足達は慣れているのかそれぞれがソファーにすわったり床(もちろん絨毯が敷いてある)に座ったりどこからともなく現れた椅子に座ったり自分なりのくつろぎ方をしてみせた。
そんな中初めて跡部家へ訪れたはるこはどうしていいかわからずただキョロキョロとしていた。それにいち早く気付いたのは跡部だった、が先に声をかけたのは岳人だった。
「高橋なにしてんだよ座れよ」
「向日、それは俺のセリフだろ」
「跡部イチイチ嫉妬すんなよ」
「アン?」
「ベトベンはいちいち突っかかっていくのやめたら?」
岳人はまだこのニックネームに慣れておらず何度目になるか分からない笑いが吹き出した。先程から同じことばかりで笑っており、いい加減飽きろと言いたいところだが、本人たちはおもしろいから我慢できない、らしい。
「座りたいのは山々だけどどこに座っていいか悩むというか…」
「何言ってんだ、あるだろう」
「え、どこ?」
「ここだ」
跡部が自信満々に自分の膝の上を叩いてくるもんだからはるこはおもいっきり無視してソファー前の床に座った。
「無視はねーだろ、無視は」
「無視だってしたくなるってば」
「どこ座っていいかわかんねーんじゃねえのかよ」
「今一瞬でそこ以外ならどこでもいいって思った」
はるこはきょろきょろ周りを見る。全員が不思議そうにはるこを見る。そしてはるこははっとした。
「鳳くん!!」
全員がバッと長太郎を見る。長太郎は一瞬、自分が呼ばれたことに全く気付いてなかったが、数秒して「鳳くん=自分」の方程式がようやく成り立った。
「なっ、なんですか?」
「ねえ、あとべちゃん、空いてるお部屋たくさんあるよね?」
「それがなんだ」
「ちょっと貸して。わたし鳳くんに話があるんだ」
「はあ?」
跡部は眉間にしわを寄せ、長太郎は驚きの顔を隠せなかった。
「ぜってぇ駄目だ」
「なんでよーあっ、信用してないってことでしょ、じゃあ分かった。もう一人借りるわ、樺地くんちょっと付き合ってほしんだけど」
「ウス…」
「これで文句ないでしょ」
「なんで今なんだ」
「どうしてでも。みんな忙しいからなかなか時間作れないでしょ」
はるこはすっと立ち上がるとドアをあけた。長太郎と樺地が少しだけ申し訳なさそうに立ち上がる。2人の間に見えるはるこがどこからどうみてもNASAに捕らわれた宇宙人で岳人は吹き出したいのをどうにか堪えた。



*
もしかしてアシベくん伝わらない?
Call me by my first name=俺様の名前を呼べ(とんでもなく偉そう変換で)


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