He should say a word

「むーかっひくん!あーそびーましょ!」
「え?ってかなんで高橋が…跡部?」
扉を開けた岳人の視界に飛び込んできたのはニコニコ顔のはること迷惑そうな顔をした跡部だった。

21


「ねーねーみんな何処行くー?」
数十分後。
ゴキゲンなはること一緒にリムジンに乗るメンバーは大量に増えていた。
家が一番近く、誘いに行った岳人を始め、偶然その近くのテニスコートで練習をしていた宍戸と鳳、道の途中で拾った慈郎、どこからともなくやってきた忍足、そして耐えきれずに跡部が電話して呼んだ樺地。
リムジンはむさくるしい男と一つの花(ただその一つの花の服装は某人のせいにより全く気合いが入っていない)でいっぱいいっぱいだった。
「っつか俺ら練習してたの知ってっか?」
「あーごめんね宍戸くん。けど息抜きも必要だと思って。休みなしでしてたでしょ、鳳くん休ませないと駄目だよ」
長太郎はハハハ、と苦笑した。どうしてこの人は分かったんだろう、と思いながら。
「ところで俺らが呼ばれた理由って何?」
岳人は携帯をポチポチいじりながら目線をあげた。どうやらはるこに呼ばれたのはともかく、急に呼ばれてリムジンへ、との流れはすでに慣れっこのようである。
「えっと、わたしの家の前に跡部くんがいたから?」
「待てって高橋、それ理由になってねーぜ」
岳人の眉間にしわが出来た。
「だってみんなと遊ぶ方が楽しいじゃん?」
「なんやそれ遠回しに『跡部とデートするのいやだから侑士くんたちと遊びたいな』ってこと?」
「侑士頼むからその標準語まじやめろって…」
「なんや失礼なやっちゃな」
忍足はしかめっ面で岳人を見た後その視線をはるこに向けた。はるこに視線を向ける頃には本人いわく『忍足侑士とびきりの笑顔』だったらしいが、そんな忍足とは反対にはるこの表情はしかめっ面だった。
「とりあえず忍足、侑士くんってのだけは訂正しといてくれるかな」
「なんでやねん、ええやんか別に」
いじけたようにする忍足を無視し、岳人は話題を変えた。
「そういやなんで高橋って侑士だけ呼びすてなんだ?」
岳人の言葉にはるこはなにをわかりきったことを、と言わんばかりの顔をする。岳人は首を傾げた。
「なんでって…忍足が調子にのったからじゃないかな」
「はるこちゃん?!俺が!いつ!調子にのった言うん!!」
「自分の胸に尋ねなさい」
「寂しいこといわんといてな!俺、さみしんやで!うさぎちゃんなんやで!」
「うっわー引くわー」
「何を根拠に、第一『うさぎちゃん』て…」
「ちょっとそれは無いと思いますよ、忍足先輩」
「ウス」
周りからの散々の言われようにさすがの忍足も凹んだ。
「あ、ってか話それたね。とりあえず特に意味は無いよ」
「ジローだけ名前だよな」
「へへ〜俺だけ名前だC」
「ああ、ジローくんは始め名前しか知らなかったから…」
芥川って名字を知ったのって2〜3日たってからなんだよね。
「ほな俺のこと侑士って呼んでくれてええで!はるこちゃん」
「ハイハイ忍足うるさい」
「なんで呼んでくれへんの?」
「自分の胸に尋ねなさい」

「おい、」
「なーに?宍戸くん」
「俺がこんなことも言うのもなんだけどよ……」
宍戸がそっと視線をそらすその視線を追った。先には。
「あとべ・・・くん・・・・・・」
人間って本当に言いたいことは言葉ではなくオーラから出るんだな、というのを分からせるように、「おもしろくねえオーラ」を全開とした跡部がものすごく不機嫌そうな顔でこちらの様子を見ていた。

*
He should say a word=ヒトコト言えばいいのに


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