I don't need dressed up now


「どこに行きたい?」
そんなメールが来たのは土曜日のこと。
「部活は?」とメールを送り返すと電話がかかってきた。

20


めんどくさいなー、と思いながらも先日の不在着信15件を思い出ししぶしぶ電話に出てみることにした。
「もしもし」
「俺だ」
「俺俺詐欺とか今更過ぎるんですけど一応110番に連絡しますね、では失礼します」
「おい待て、跡部だ」
俺だ、とか言うのが悪いんじゃん。ねえ。わたし悪くないよ。
「で、なんの用事?」
「暇だろ。どこでも連れてってやろうかと思って」
「勝手に暇って決めつけないでよ、暇だけどさ。ところで部活は?」
「土曜日は基本的にオフだ」
「ああ、そうなの…練習は?しなくていいの?」
「家にコートがあるからな、24時間練習できる」
ああ、そうだった。この人金持ちなんだった。
「で?」
「え?」
「だからどこに行きたいのか聞いてんだろ」
「そんな急に言われても…」
「とりあえず外出ろ、迎えに来てる」
「はあ?」
おそるおそる部屋の窓から外を見るとまたもや真っ黒のリムジンが止まっていた。ほんとご近所さんで最近噂になってるから止めてほしいんだけどな…。
「とりあえずちょっと待って」
それだけ言い、相手の返事も聞かずに電話を切るとパパッとそのあたりにあった服に着替え髪型を整えて外に出た。車のドアが開いたと思うととそこにはやっぱり跡部がいた。
「ほんとにいるし…」
「いねえわけねーだろ」
「はあ…」
はるこはリムジンの中をキョロキョロ見る。初めて見るその感じに戸惑いを隠せない。
「で、どこに行くんだ」
「えっとねえ…」
はるこはよっとリムジンに乗り込むと笑顔で口を開いた。
「うちから一番近いテニス部員のお宅へ」
「……はあ?」
跡部はあからさまに嫌そうな顔をした。しかしはるこは無視した。
「みんなで遊ぶ方が楽しいじゃん、運転手さーん!わかります?」
「ここから一番近いお宅は向日様のお宅です」
「あ、じゃあ向日くんちまでお願いします〜」
「了解いたしました」
「おいちょっと待てよ」
近寄ってこようとした跡部からはるこはすっと離れた。
「なんで他の奴まで呼ぶんだ」
「前回の今回でよくそんなことが言えるわね。自分を守るためだったら何だって使うわよ!」
真面目な顔して答えるはるこ。跡部の眉間のしわが2本増えた。
「っつか…」
跡部ははるこの顔を見て、そこから視線を下へ下へと落としていった。
「お前なんだそのびっくりするほど色気のねえ服」
「なによ!ジーンズの何が悪いの!超動きやすいじゃん!」
「馬鹿か、ちょっとはお洒落してこいっつてんだよ」
「なんで跡部くんとデートするためにわざわざおしゃれする必要があるのよ」
あ、でも向日くんとかとも会うのにもうちょっとかわいい格好してもよかったなー、とはるこがボソリと呟いているのを聞き、跡部は真剣に思った。

この女、思った以上にやっかいである…、と。

*
あとべなんてパーカージーパンで充分よ
I don't need dressed up now=今おしゃれは必要ない


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