I have to give up


「はあ」
「はああ…」
「はあーーーー…」
病気だ、と宍戸は直感で思った。
昨日女子学生問題とやらは解決したんじゃないのか?全く忙しい奴だな…。
「宍戸くん…あの、少しだけ聞いてもらっていいですか」
「なんだよ改まって」
はるこが昨日の話をすると宍戸は声にならない叫び声を上げた。

19


「あいつばっかじゃねえの!!!」
「あ、やっぱ宍戸くんもそう思う?」
「やっとまともになるかと思いきや結局根底は一緒かよ、あいつまじで頭カスだな」
「わたしが昭和女すぎるとこもあるけどさあ、宍戸くんならわかってくれるでしょ?」
「あいつまじで脳になんも入ってねーんじゃねーの」
それかほんとに恋愛知らねえか…、いやかなりあり得るな。あいつこの世で一番好きなの多分自分だしな。

ぶつぶつと言う宍戸に対し、自分のことのように怒ってくれているのが逆に申し訳ない気分になってくる。そんな中一段と大きな音を立ててドアが開いた。扉の方を見ると眉間にしわをよせた忍足が立っていた。
「ねえ忍足、ドア壊れちゃうよ」
「そんなん今はどーでもええねん!それよりはるこちゃん無事なん??」
「え?」
無事かと聞かれると…なんて答えていいものか。
「なんもされてない?大丈夫か?」
「あ、はあ…なんのことかさっぱりですけども」
まあなんとなく勘付いてはいるけど。
「ほなよかった…」
忍足はふう、とため息をついてはるこの頭を撫でた。いきなりのことでびっくりしたが今はそんなに悪くないと思った。ってかこう言うこと素で出来る人なんだね。以外と優しいじゃん。
「すまんなあ、あの跡部のアホのやつが」
「なんで忍足知ってんの」
「昨日、多分はるこちゃんと別れた後にあいつから電話あってん。それで聞いてな」
「ああ、そうなの…」
「俺、跡部も変われたと思ってんけどな…ほんま大丈夫やった?とりあえずたっぷりしかっといたからな!心配せんでもええで!」
「いや、そんなそこまでじゃないんだけど…うん、」
なんか、むしろ、わたしが悪いような気分になってきた。なんだかみんな大げさすぎない…?
無理矢理犯されて捨てられたとかなら分かるけど…なにも未遂なのにここまでもちょっとなんだか、ねえ。
「え?そこまででもあらへん?」
忍足の表情が一転してニコッと…いやニヤッとした気がした。気のせいか。こんなにもわたしのこと考えてくれてるのにそれは失礼だ。
「あ、いや、うん、本人さえ反省してくれてるんだったらわたしは別にそこまで…何もないわけだし…あの」
だからこれ以上謝んないでください。ほんと、良心が痛む。
「ほんま?!やっぱりはるこちゃんはええ子やわ〜、らしいで。跡部」
「え?」
はるこがパッと振り向くとそこには跡部がつったっていた。
「なんでいるの」
「別れるつもりはなかったからな」
「忍足?どういう意味?」
「すまんなはるこちゃん、跡部に怒ったんはほんまやねんけど昨日相談されてん、こんな跡部初めてやから半分お芝居でした、ってな」
はるこは大きなため息とともに呆れた。なんなの、ほんと。
「ってか、昨日無理言ったよね」
「そんなつもりは一切ないが?」
「だから“そういう付き合い”はできないって言ったよね?」
「“そういう付き合い”でなかったら良いんだろう」
跡部がニヤリと笑う。はるこはいやな予感がする。
「お前がいつか“そういう付き合い”をする日まで待ってやる。そうすれば別れる理由などなくなるだろう?」
「言っときますけど一生来ないからね、そんな日」
「そうはさせねえ、なんせお前はこれとないくらい俺に惚れるんだからな」
まったく一言も二言も多い奴だわ!跡部景吾って男は。どこからそこまでの自信が沸いてくるんだか…。
「だからどういうことだって言うのよ」
「お前は昨日も今日も俺様の女だ」
「そういう言い方どうにかできないもんかな…」
はるこは呆れつつも、表情はどこか明るかった。
周りに居た忍足も宍戸も、そんな二人を見てどこか安心したようだった。

「なあ、お取り込み中あれなんだけど…」
「え?」
声のする方を向くとクラスメイトの三吉くんがいた。
「お前、跡部と付き合ってんの?」
「げ」
あれ、しまった、ここ、教室じゃん
「なんだ三吉、嫉妬か?」
跡部は手なれた手つきではるこの腰に腕をまわしいつものドヤ顔でものを言う。
「はあ?ちげーよ」
そう否定する三吉など目もくれずはるこは離れようと跡部の身体を押すがびくともしない。
「っつか黙ってくんない?離してくんない?」
「なんでだ、ちゃんと言っとかねえとお前に手を出すヤツがいるだろーがよ」
「だからあんたが揉め事の最先端だっつってんでしょーが!」
はるこは右ひじでおもいっきり跡部の腰を強打した。
「ってえ!!」
「気易く触らないでくれる?」
「あっはっは!お前ら漫才かっつの!」
三吉が大声で笑った。それを筆頭にクラスメイトたちも今まで堪えていた笑いを一斉に噴き出す。
「え?え?」
「高橋ってどんな奴かよくわかんなかったけどおもしれーな、あの跡部をここまで言うやつ初めて見たぜ」
三吉はゲラゲラ笑いながらじゃっかんながらも目には涙も見える。
「ほんと、今までの女に比べていい彼女じゃねーかよ」
「っち」
「三吉、くん?」
「おお、跡部に泣かされたら俺んとこ来いって、慰めてやるぜ」
「三吉!」
「あっはっは、跡部様のお怒りだぜ」
しばらく3-Cの教室には笑いが響き渡り、そしてついに跡部との交際が学校公認になってしまった。
もう後には引けない。
はるこは覚悟を決めるようにため息をついた。
「とりあえずなにか起こりそうだったら宍戸くん、助けてね」
「俺かよ」

*
やたら学校に行っている気がしますが気のせいですよ
I have to give up=諦めなきゃいけない


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