I'm relieved

次の日、学校へ行く前朝ごはんを食べているはるこの家の前にまたも一台のリムジンが止まった。
「…あいつ、ちょっとは学習しろ」

17


「おせーぞ」
玄関を出るとまたも門によりかかった跡部が腕を組んでえらそうな顔(ここポイント)で待ちかまえていた。
「あのさー、人の話覚えてる?」
「はあ?」
「以前わたし全く同じ状況で遅刻してでも歩いて行くって言ったよね?」
「…言った、か?」
「言ったけど!」

なんで覚えてないの!なんなの?都合の悪いことは忘れちゃう人なの?
……、絶対そうだ。そうとしか考えられない。

「とりあえず遅れちゃやだしわたし先に行くから」
はるこはそう言うと跡部を無視してさっさと歩き始めた。跡部は運転手に「今日はもういい」と告げると慌ててはるこの後ろを追いかけた。

「おい待てって」
「げ、なんでついてくんのさ」
「げ、でも、なんで、でもねーよ、この俺様がわざわざ一緒に行ってやろうっつってんだ感謝しろ」
「その態度がまずいやだ、ってかさ一緒に行ったらみんなに見られるってわかってやってる?」
「アン?別にいいじゃねーかよ、見せつけてやれよ」
「わたしはいやなんだけど…」
ふと、昨日の3Aに押しかけて行く女子集団が脳裏をよぎり、はるこは身ぶるいした。…おそろしい。
「と、言うわけで。ばいばい!」
はるこはそう言い残すか言いのこさないかのところでもっていたカバンを両手で抱え込みダッシュした。しかしそこは対戦した相手が悪かった。跡部はご自慢の脚力ではるこの足になんてすぐに追いついた。
「お前どっから俺様に勝てると思ったんだ、おい」
「…こう言う時は逃がしてくれるのがセオリーじゃないの」
「残念だが俺様にお前のセオリーなんて通用しねえ」
「俺様め…」
けど、いくらなんでも、このまま、校門は…困る!
「とりあえず跡部くん、あの、お願いだから朝一緒に登校とか止めない?」
「アン、どうしてだ。今までの奴らは喜んで行くって言ったがな」
「あのさーまず普通カノジョの前で前の女の話する?」
「カノジョって言えてるじゃねーの」
はっと気付いた時にはすでに遅く。跡部のニマニマ顔にはるこは悔しくなるだけだった。
「その言葉に満足した。今日は別に行ってやっていいぜ」
そう言い残すと跡部はスタスタと先に歩いて行ってしまった。取り残されたはるこはポカンとしつつも追いついてしまわないようにゆっくり、けど遅刻しないように気持ち急いで登校した。

「ねえねえ、もしかして跡部くんが今まで付き合ってた子全員振っても付き合ってるのってはるこちゃんなの?」
今、わたしが牛乳を飲んでいたらその子の顔は今真っ白になっていたと思う。
登校するなりクラスの女の子に話しかけられたと思ったら話題が話題で思考回路はショート寸前…、じゃなかった。それは隣の席の宍戸もそうで。そんなことも知ってか知らずか慈郎が「うん、そうだよ〜」とニコニコと言うもんだからはるこも宍戸も鳩が豆鉄砲を食らったような顔で慈郎を見た。
「あ、やっぱりそうなの?いやさ〜前教室で跡部くんと忍足くんが喧嘩してるのはるこちゃんが止めてたのがあまりにも常人じゃ出来ない技だし跡部くん全然怒ってないしこれはそうかなって…」
「そうなの〜?だってさ、はるこ!宍戸!」
「いやあのジローくん…?」
「そうだぜジロー、お前何言って…」
女子生徒は首を傾げ、やっとはること宍戸の態度の意味がわかったようであった。
「あ、あれでしょ。わたしが跡部くん取られたって思って、ってことじゃないの?」
「へ、違うの…」
「違う違う!まずわたしあんな俺様興味無いし!彼氏いるし!むしろ良くやってくれたって言うか!」
本人目の前にケラケラ笑う姿に2人はどうしていいかわからない。
「あ、ごめんごめん…ほんと跡部くんと忍足くんを教科書で殴る女の子なんてはるこちゃんくらいなんじゃないの?ほんと実はここ最近で一番笑い堪えてたんだよ、わたし」
「え・・・あ、」
「というわけでわたしみたいな子も氷帝にも居るしむしろ堂々としてるといいんじゃないかな。特にうちのクラスサバサバ系集まってるし。他に比べて彼氏いる率も高いし」
「いや、でも…」
「はるこちゃん可愛いし。うん、平気平気!」
「いや可愛くないし平気でも…」
「なんだかんだ言って跡部くんにバレるのが怖いから変なことしてる子は出ないと思うけどなー多分自分の親の会社とかの経営とか左遷にも関わってくると思うし」
「…カイシャ?サセン?」
「ま、がんばって。わたしは応援してるよ」

会社とか経営とか左遷とか、は聞き流すこととして。なんだかとりあえず一番心配してたことがそこまで心配する必要無くなったみたいです。多分。



*
そんなこと気にして付き合うとかやってられませんね!
I'm relieved=安心したよ


[ 18/30 ]

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