プロローグ
春、四月、新学期。
白いブラウスを着て赤いネクタイをきゅっと結ぶことで気持ちを引き締める。ブラウンの膝上丈のスカートを履き、ベージュ色のブレザーを上から羽織る。最後に黒いハイソックスを履いて鏡の前に立ってみる。

「これが憧れの氷帝の制服…!」

まるで恋する女の子のように頬をそめて鏡の中の自分にうっとりしてしまう。


紹介が遅れた、彼女、高橋はるこ。今日から氷帝学園中等部3年生である。


親の転勤、そして夢のマイホーム購入と共に東京へ引っ越してきた彼女は何箇所か候補があった中で氷帝学園へ通うこととなった。年頃の女子ともあり判断基準は「制服の可愛さ」。というわけで編入試験をギリギリ切り抜け晴れて氷帝生を名乗ることができるようになったのである。

「この制服に腕を通して学校に通えるなんてほんと数ヶ月前のわたし!よくやった!」
鏡の前でグッとガッツポーズを取る。そしてふと鏡の中の自分と目が合った。なんだか恥ずかしくなった。
「さて、しょっぱなから遅刻なんて馬鹿らしいし、早く行こうっと」
学校、早く打ち解けたいな〜、そうボソボソ呟きながらはるこは新しい鞄を右手に握りしめ家を出た。



『転校生』
それだけで気持ちはドキドキする。
漫画とかでよく見る転校生に自分がなるんだと思うとなんだか気分が舞い上がってきた。
「なんか、転校生っていいな!」
道端でフフン、と一回転してみる。一回転したところで羞恥心がこみ上げてきた。何やってんだ、わたし。落ち着け。

氷帝の近くに来ると同じ制服を来た生徒がたくさん居た。はるこの気持ちも高昇る。段々近づいてくる正門に自然と足早になる。そしてついにその門の前に立った時心の中で呟いた。

今日からわたしは氷帝生。

きっと素敵な学生生活が待ってる。
きっと素敵な恋だって待ってる。

はるこはしっかりと地を踏みしめ、正門を潜り歩き出した。


今日からわたしは氷帝生。



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