Gotta start somewhere

放課後になってとりあえず慈郎に連れられテニス部の部室にやってきたはるこは何故か部室の中に跡部と2人きりという状況下にいた。
…なんでだ?


16



「とりあえずさ、跡部くん」
「なんだ」
「まず謝ってよ」
「?」
本気でハテママークを浮かべる跡部にはるこはため息をつく。
「なにがおめえ等に興味無くなっただけとか言いふらしてるの?」
「ああ、それか」
それかじゃないわよ、それかじゃ。わかってるじゃん。そのせいでこちとら大迷惑なんですけども。なんかバレてるんじゃないかって今日一日生きた心地しなかったってば。何回わたしが途中で帰ろうって思ったと思ってるわけ。
「事実だから言ったまでだろう?」
「あなたはもう少し自分の言葉の影響力を考えるべきです」
あの血眼の女の子たち見た?絶対分かってないでしょ、こいつ。
「けど隠れて付き合うっていうのか?」
「ア…」
付き合う、そうか。付き合ってることになってんのかわたしたち。そうかそうか…あまりのスピードの早さに全然ついて行けてなかったわ…。ってか、…ってかさ。
「やっぱり付き合ってるの?」
「今更何言いやがる」
「いやほら、アトベクン顔良いからもっと可愛い子と付き合えばどうかしら?」
「だから何度言わせる。俺の興味は今お前にしかねえんだよ」
そんな顔だけは良いんだからそういう言葉を面と向かって言わないでくれないかなこの人…。
自分のかっこよさわかってんのかな、あ、その辺はわかってるだろうな。あーあ、悔し。わたしB専だったらよかったのに、悔しいことに普通にかっこいい人が好きなんだよ、わたしは。
「けどほんと不思議だから納得いくまで答えてくれない?」
「何をだ」
「だからさ、わたし跡部くんと出会ってまだ2日とかじゃない?しかも別にわたし可愛くも無いし、振られたこと無いだろう跡部くんのことわたし振ったし。なんでそこまでしてわたしと付き合いたいの?」
少しは興味はある。それは否定しない。けど街で並んで歩いたら絶対言われる。
『なんであんなカッコイイ子の彼女があの子なの?ありえないでしょ』
わたしフツーの人だからそういうのほんとに気になるし嫌なんだって。だってわたしが逆の立場だったら絶対そう思っちゃう。それなのになんで?なんでわたしなの?女なんて容姿とかテクニックとかなんかそういうの優先させそうじゃん?勝手に思ってるだけだけど。それなのになんで他の女の子全員捨てちゃったの?
わたしフツーだから全然わかんない。跡部くんの考えてることなんて全然分かんない。

跡部はおもいっきり眉間にしわを寄せてはるこにデコピンした。
「いてっ!」
「お前、バカか?」
「はあ?!馬鹿はどう考えてもそっちでしょ!」
「考えても見ろよ、告白する時に相手のここが好きだあれが好きだって1から100まで言ってるような男なんてきもちわりーだろ?」
「あー」
まあ、確かにそうか。それは確かに共感出来る。
「別にいいじゃねーかよ。俺様が気に入ったって言ってんだ。気に入られとけ」
「本気で言ってる?」
「さあな」
「どういう意味よ」
「意味なんてこれから知ればいい」
「もう一回聞くよ?わたしで良いの?」
「お前が良いんだ」
「誰に誓える?」
「神だろーが閻魔だろーがお前にだって誓ってやるぜ?」
「ああ、そうなの」
なんだか一気に気が抜けた。そうなの、そうなの。それにしてもまあよくもスラスラと恥ずかしいお返事を。顔はいいんだから本当に少し考えた方がいいと思う。
「じゃあ、わたしの人生で一番のモテ期って信じることにする」
「はあ?」
「いいのいいの、気にしないで。」
とにかく自分の心の中で整理がついた。
「わかった。わかりました。」
はるこはうんうんと何度も頷いた。
「一応頑張ってみようじゃない?ねえ、跡部くん?」
「何を頑張るっつんだよ」
「そりゃあ決まってるでしょ」
はるこはにっこり微笑んで、そして口を開いた。
「跡部くんを好きになる努力を」
跡部は満足げに口角をニヤリと上げた。そして彼もまた口を開く。
「言ってろ、お前はすぐにでも俺様に惚れることになるぜ」
はるこは「ハイハイ、」と言い残すと、部室を後にした。跡部もスッと部室のベンチから立ち上がるとコートに足を運んだ。
その足取りはとても軽やかだった。

*
ひとまず付き合ってみるという選択肢。
Gotta start somewhere=とりあえずはじめなきゃ


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