He is gentle boy

とりあえず跡部という人物がどういうものかじっくり見てみよう、と思い立ち、ベンチに座って部員たちの練習風景を見ていた。(樺地くんが「ここで座ってていいですよ」って言ってくれたの超感激。なんでだろう、出会って間もないのに彼が普通の言葉を喋ってくれることに対してものすごく感激してしまう。)
そうしたら休憩に入っただろう長太郎がやってきた。
「あ、高橋先輩、そこ座っていいですか?」


09



「あ、鳳くん、どうぞどうぞ」
はるこは自分の横をささっと払うとポンポンと叩いて長太郎を座るよう促した。
「ありがとうございます」
にこっと笑いながら座る長太郎にはるこは癒しを感じていた。
「ってかさ、鳳くん」
「はい?」
「すっかり忘れてたんだけどわたしこんなとこ座ってて平気かな?じゃっかんフェンスの向こうから視線を感じるんだけど…」
樺地くんにいいよと言われ感激し座ってみたものの各方面からの視線の痛さが気になり始め、ただ樺地くんがせっかく良いよって言ってくれたのに、とか思うと動けなかったけど良いタイミングで相談できる人が来た。タイミングいいぞ、鳳くん。
「あ…そう、ですよね…」
長太郎はうーん、と考え「マネージャーになるとかどうですか?」と提案してきた。しかしはるこはすぐにその考えを却下した。
「どうしてですか?」
「うん、とにかく性に合わない」
「…十分な理由だと思います」
長太郎ははは、と苦笑いしながら答えた。
さすが鳳くん、物分かり早すぎる。どっかのえらそうな独裁者は全く物分かりよくないけどね。

「そういやさー、聞いてよ鳳くん」
誰かと居るとフェンスの向こう側の視線など、ころっと忘れてしまうもの。はるこは長太郎に対して話を切り出した。
「跡部部長のことですか?」
「げ、なんで知ってんの」
「昨日俺、あの場に居ましたからね」
「そういえばそうか…」
もう誰が昨日いたか忘れちゃってたよ…。

はるこは俯きうーん、と考えたが、よし、と決め顔をあげて長太郎を見た。

「ねえねえ、鳳くん」
「はい」
「今からわたしの仮説を述べます。間違ってるとこだけ後で訂正してね、あ、鳳くんの知ってる範囲でいいから。あ、あと言えないことは言わなくてもいいから」
「それってどういう…?」
「まあまあ、多分話聞いたら分かるから」
はるこは一度深呼吸をするとキョロキョロと周りを見渡した。きっと跡部の位置をさぐってるんだな、と長太郎は直感で感じ取った。そして落ち着くとゆっくりとしゃべり始めた。
「跡部くんは…わたしに女になれって言ったけど多分彼女ってわたしだけじゃないんでしょ?あの顔と性格だもの、なんか彼女じゃなくてもさ、都合がいい女とかさ、そういう人いそうだなーって思って」
長太郎はただ黙っていた。はるこに間違いだけ訂正しろと言われたからだ。なにも間違っていない。
「俺の女になれってほんとにその言葉の意味のままでしょ。鳳くんその言葉自体を聞いてないからわかんないかもだけど…」
長太郎は静かに首をふった。はるこの話と今まであったことを考えるときっと跡部の行動は何も変わっていない。そう思ったから。
「そうだよね?やーっぱりなー。体で〜の件で半分以上確信してたんだけどやっぱそっか」
長太郎にははるこの顔が少し残念そうな顔に見えたような気がした。
「あ、ごめんね、鳳くん。こんな話に付き合わせちゃって」
「いや…!」
「まあわたしは今のままで付き合いたくないし。とりあえず頑張って問題解決するよ」
「あの、高橋先輩」
「ん?」
「何かあったらいつでも相談乗りますから言ってくださいね。宍戸さんとか…先輩達には言いにくいこともあるだろうし…。俺、口固いですから」
そういって長太郎ははにかんだ。
「…鳳くん…」
なんでこんなに鳳くん優しいの、わたし鳳くんに惚れるってか鳳くんがこくはくしてくれたらどれだけ悩まずにすんだことか…絶対ソッコーで「はい喜んでー!」だったことに間違いない。いやそういう問題じゃないない。

はるこの口からは大きな大きなため息しかでなかった。

*
やさしいこうはい。
He is gentle boy=彼は優しい少年だ


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