Accident 5

「なかなか気がつえー女じゃねーか。気にいった、お前、俺様の女にしてやってもいいぜ」

神様、今からわたし、日本語の通じない女になっても良いですか?


08



「えっと…あの、すみません。わたしフランス人なので日本語わかりません」
「めっちゃ日本語やんか」
「眼鏡はだまっとけ」
「アン?俺様はフランス語も出来るぜ?なんならフランス語で口説いてやろうか?JE…」
「あーあーいいってばいいってば」

はるこの負け。

「えっと、ヒトラーくん?」
「は?」

おっと危ない危ない、勝手に独裁政治家ヒトラーくんって呼んでたことがばれちゃうよ。

「あ、違う、跡部くん?だっけ?」
「なんだ」
「オレノオンナニシテヤッテモイーゼーってなんかどっかの国の言葉?英語で言うとHow are you?的な?」
「日本語分かんねえのか?」
「知ってるけどわたしの辞書にそういう単語は無いもんだから」

かの有名なナポレオンの辞書にだって「不可能」って文字は無かったんだしわたしの辞書にだって無い単語くらいあるわよ。

「だったら体で教えてやっても良いんだぜ」
跡部がそういいながら腕を腰に伸ばしてきた。そして触れるか触れないか…のところではるこはひょいと避け、宍戸の後ろへ回った。
「セクハラはんたーーい。跡部くんには常識が無いの?」
「今更何言ってんだよ」
「宍戸、お前は黙ってろ。これはこいつと俺様の問題だ」

再び跡部ははるこに向かった。はるこも負けてられないと宍戸の後ろから出てきた。
「とりあえず!わたしはそんな上から目線の人、お断りですから」
「アーン?俺様が、お前は俺様の女にしてやっても良いって言ってんだ。ありがたく受け入れろ」
「なんでそんな俺様なのさ」
「どこがだ?」
これが普通と思ってるわけ?ありえない。

「とりあえず!お断りです!」
「こんなイイ男から口説かれることなんかこの先、一生ねーぞ」
「ぐっ…」

まだ14だし…!
けどなんかほんとにそんな気がする。顔だけは非常に一級品…ってか、てかてかてか。わたし気付くの遅いじゃん。もっと早く気付けよ自分。

「あの、一ついいですか?」
「アン?」
「なんで、わたしなの?」
「は?」
「だから、なんでわたしを彼女にしたいの?」
「そんなの決まってんだろ?」
跡部は得意げに、そしてドヤ顔でさらに口を開けた。
「俺様が気にいったからだ」

こいつ、日本語できないんだろうか…。
フランス語出来るみたいだからきっと日本語できないんだね。うあーかわいそ。
「あの、とりあえず無かったことにしていただけませんか…」
「言っとくが、お前に拒否権は無い。これは絶対だ」

はるこが「なんでさーそうやって…」と反論しかかったところで跡部はすっとその場を離れた。首を傾げるはることは裏腹に跡部は忍足の元へ行き、とても自然な流れですっと忍足の携帯を取った。
そして中を見た。
そして絶句した。

「おい忍足」
「なんや人の携帯勝手に見といて」
「なんでこいつの連絡先お前知らねーんだよ」
後ろで大爆笑するはること宍戸。忍足は呆れた顔で
「俺がはるこちゃんの連絡先知っとると思ったお前が間違えとる」
と、言い跡部の肩をポンと優しくたたいた。
「やだー跡部くんおもしろーー!」
「ちょっと今のはかなりうけたな」
「宍戸くーん、ちょっとなのかかなりなのかはっきりしなよー」
プライドの か な り 高い跡部が忍足の携帯を地面に向かって投げかけたその瞬間だった。携帯が壊れるよりも先に跡部の視界には見たことのない携帯が現れた。
「ちょっと今の跡部くん可哀想だったから連絡先くらい教えてあげるよ」
「お、高橋大人だな」
「でしょでしょ〜もっと誉めて誉めて!」
跡部は一瞬どうしようか迷いつつもとりあえず連絡先を交換し合った。しかしその後でちゃんと一言つけるのを忘れてはいなかった。

「と り あ え ず どう言われようが今日からお前は俺様の女だからな」

はるこはにこっと笑い、とりあえず無視しよう、と心に決めた。



*
跡部もここまで来ると意地ですよね。



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