名前。
それが此処で生きる仮の名前。
この学園で本名を晒していくのが難しいというのも理由のひとつかもしれないけれど。
尤もな理由はとても素っ頓狂で単純明快なもの。
私がこの世界の住人ではないから。
「魂を狩る仕事、ですか…」
「正確には回収です。武器強化には欠かせませんし、大抵回収率と戦闘力は比例しています」
来たる春先。行き場の無い私を拾ってくれたのは蛍光ピンクと白を纏う長身の男性だった。聞けば彼は学校の理事長だとかで、会話を進めるうちに私の違和感に気付いたらしく、今は尋問の真っ最中である。
奇妙な人に出会ってしまったものだ、と内心後悔しつつ質問に淡々と答える。
「私にとって重要なのはその武器が意思を持ち、尚且つ人型に変化することですよ」
「此処に来る前までは彼も人間だったんですけどね」
これも私達と彼の世界で明らかに違う概念の一つだ。
こちら、では鎌や銃や刀が人間と同じような生活を送っているわけではないらしい。
「名前もあるんですか?」
「普通の人間と変わりません。結婚も可能ですよ」
「ふむ……成る程成る程」
「チッ」
興味津々に私の腰に着用されている武器を見つめるものだから、腰から小さな舌打ちが聞こえた。
彼にもそれはわかる筈なのに、けろりとした様子で私に向き直ってびし、と薄紫色の手袋を纏った人差し指を立ててみせる。
「貴女方の大体の事情は察しました。結論から言わせて頂きますと、貴女は当てがありませんね」
「さっきからそう話してますが」
「ならば簡単です。とある条件に乗ってくだされば私は貴女の衣食住を保証させてあげましょう」
「条件?」
いい話に持って行かれる前に彼がさらりと口にした、場合によっては私に不利益になる情報の詳細を求める。対する彼はウキウキとした様子で再び人差し指を立てた。
「ひとーつ、貴女方が別の世界で行っていた事柄はこの世界での祓魔師の行為とあまり変わりありません。よって、祓魔師の手伝いをしていただきます」
「タダじゃ住まわせねぇって寸法だな」
「その通りですよ。武器くん」
初めてコミュニケーションを取った二人に妙な違和感を覚えつつ、私は次を促す。
「ふたーつ、私が経営する正十字学園に入学していただきます。青少年が学問を疎かにしてはいけませんからね」
「…お気遣いな、」
「みーっつ、一人の生徒の監視です。これさえ飲めば大抵の自由は認めてあげましょう」
「……わかりました」
何となく、どの条件が本命なのかわかった気がした。ある生徒の監視の為にわざわざ二つも余計な条件を提示したのだろう。確かに依頼する相手がどこの馬の骨かもわからない奴なら厄介だが、私には帰る場所も味方になってくれる人も傍にいない。
いざとなれば、彼がしらばっくれて私のみを見捨てることも可能だ。
それがわかっていても私に拒否権はない。
「で、監視対象は?」
「案外乗り気ですねぇ。えぇ、彼の名前は奥村燐です」
言葉と共に手渡された写真には嬉しそうに笑う子供がいる。ちなみに全然乗り気じゃない。
「失敬、それしか見つからなかったもので。しばらくしたら新しい写真をご用意いたします」
必要のない写真を送るなんて、ニッコリ笑う彼は私に何をさせたかったのだろう。とにかく、私のやるべきことは決まった
「私、日本語喋れません」
「おやまあ」
始まりの黒い傘
「英語で喋ってますから私達」
「イギリス人ですか?」
「生まれはイタリアです」
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これも混合トリップものです
すいません
わかる方はわかる
元ネタは魂喰です
武器は案外空気…のはず
魂感知とか魂の共鳴とかは無いことにします
あくまで青エク主体