人は見かけによらない。

その最高と最悪な例を紹介しようと思う。


学生時代。自分で言うのも難だが、それはそれは一般的な女子高生だった。

"だった"と言うからには、今の私は明らかに異常であると自負しているわけで。
とりあえず、彼らとの出会いが全ての始まりであることを知らずに六年前の私は普通に高校生活というサイクルに溶け込み始めていた。
その日はいつもの様に授業を聞き、友達と下らないことを喋り、昼休みもいつも通りやってきた。


ただ、いつもと少し違ったのは仲良くしてる友達が部活のミーティング、生徒会、追試、先生からの呼び出しという偶然の重なりで昼食後、自分一人だけになっていることだけ。
まさにポツンという言葉が似合う状況を可笑しく感じながら、机を離れて廊下に足を向ける。


どうせ教室にいてもすることはないし、たまには友達というものに縛られず好きな所へぶらぶらしてみるのもいいかもしれない。

まず、頭に浮かんだのは図書室。読書があまり好きではない自分としては気が進まないけれど、来神高校の校舎を全て見れずに卒業式を迎えるのはなんだか気持ちが悪い。友達がいなくて暇なのにも関わらず、その時間を利用して行きたい所に行けるとは…今日はいい日になりそうだ。















しかし、それはいきなりやってきた。

男子の笑い声と女子のお喋りで賑わう廊下のBGMを切り裂くようにして空気が流れた。
俗に言う"突風"と思われたのだが、直後に過ぎ去った塊と聞こえた衝突音にそれは完全否定される。

「………教卓?」


言葉通り、教卓だ。
しかし足元に転がっている教卓は見事に丸まって変形しており、状況からたった今、己の鼻を掠めるギリギリにこいつはぶっ飛んできたんだと判断する。

自分の身には奇跡的に何もなかった。
危機一髪と改めて判断すると共に目的地第一候補の「図書室」に行ってはいけないんじゃないかという思考が過ぎる。今の出来事が黒猫や靴紐が切れるみたく、縁起の悪いことに思われると他の誰でもない自分の直感が告げている気がしたのだ。



「うん、危ないよね……。何か私を図書室に行かせないとする力が働いているよ」



回れ右、退散。
図書室へと続く廊下を背にしたのち、二度目の破壊音が聞こえた所で自分の行動に後悔はしなかった。

「ちょっと遠回りだけど……行ってみようか」














♀♂


「ふー」


第二候補地、屋上。
此処へ続く扉に鍵が掛かっていなかったのが幸いしてすんなりと中へ入ることが出来た。
いつもは施錠されていて立入禁止の筈なのに……という思考は隅に追いやって、寄り道してきた購買で買った苺牛乳を飲みつつ、清々しい青空と濃厚な雲を見上げる。
教卓がこちらに吹っ飛んできた時とは比べものにならない位の優しいそよ風が、昨日切ったばかりの髪の毛を撫でた。



「あ」

ふと屋上を見回せば、隅の方に先客がいた。
金髪で長身の男子生徒。
見たことがなくても周りから聞いた噂や情報で彼の名前は知っていた。



「平和島……だっけ」


何かが気になるのか頻りにフェンスの向こう側、つまり外を気にしていたみたいだけれど私の呟きに反応して平和島はこちらを見た。
距離はあった筈なのに彼の声は良く響いて私の耳に入る。







「……悪かった」
「………………へ?」

優しかったそよ風は、びゅうびゅう北風のように、私の髪を巻き上げた。








今なら飛べるきがする














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