人間皆生まれた時は善人でも悪人でもなく、それからの周りの環境や親によって性格や思考は作り上げられていくものと思われる。
そりゃあ遺伝とかも関係してるかもしれないけどさ。


でも、目の前にいる彼は何がどう転がっても隣みたいなアイツに絶対ならないだろう。



冒頭に散々言っておきながら私の知り合いである折原臨也は生まれた瞬間からこうであったのだろうと思う。

人間が好きだと言っておきながら、こけにしたり、利用したり、追い詰めたり、愛情表現がねじ曲がっている変な奴。



だから隣のコイツは生まれ変わりとしか言いようがない。いや、寧ろドッペルゲンガーで死ね目の前のアイツだけ。


「はじめましてー、僕はサイケ」

「てことで名前、ヨロシクね」

「何がよろしくになるんだコノヤロー」


キラキラと周りに星が飛んでいそうな白いコートに、蛍光ピンクのヘッドフォンを付けた彼はサイケと名乗った。本名サイケデリックドリームス。
にぱーと笑う顔は折原臨也と瓜二つなのに、印象に天と地ほどの差がある。

対して爽やかな笑みを浮かべる眼前の折原臨也さんには、うん。殺意しか湧かねーよ。



「アタシが納得出来るように、原稿用紙に書いて持ってきなさい」

「俺、歌なら歌えるよー」

「サイケはこれで遊んでて」

「なあにこれ?」

「ルービックキューブ。全部の面の色を揃えたら教えてね」



ほい、と渡したカラフルな立方体にサイケは目をお星様みたいにキラキラ輝かせた。ホント誰?



「うん、がんばるね!!」

「おーおー頑張るがいい少年」


そう言ったのち、臨也に向き直る。これで邪魔は入らない。



「さすが保育士。扱いが慣れてるね」

「トラブルへの扱いと言ってもらいたい。で、あれは一体なんだ」

「自分で言ってたじゃないか。サイケデリックドリームスさ」

「名前のことじゃない。大体なんでお前と顔が一緒なんだ。不敏すぎる」

「うえーん!!名前ちゃん、全然解けないよ」


サイケ諦めんの早っ。
ま、一面揃えるだけでも苦労なのに全面は大変だったか。
ごめんね、と頭をなでなでしてあげるとなんとも複雑な気分になる。

アタシがぐずる臨也を慰めるなんて日が訪れるなんて……ねぇ。


「よしよし。よく出来ました」

「ホント?俺いい子?」

「うん、サイケはいい子だよ」


不安がらせないようにこちらも笑ってみせると、涙目のサイケも釣られて明るく笑った。

どうしよう…。
この真っ白ハートが臨也と同じ?

有り得ない。
天使だよ天使。


思わずぎゅーって抱きしめて頬をすりすりする。


「くすぐったいよお」

「もぉ可愛いなあ、サイケは」

「えへへー」

「ねぇ、ちょっと」



サイケと抱き合っていたら、サイケの肩の向こう、明らかに不機嫌そうな臨也が見えた。



「ちゃんと説明するから、おいで」

「やっとその気になったか」

「あ………サイケは置いといて」

「やだ。サイケ可愛いし抱き心地最高だし気持ちいいし」

「俺もくっついてたーい」

「サイケは黙って言うこと聞きなさい」


ぐい、と臨也にサイケを持って行かれそうになるがここで負けてはいけない。
こちらも思い切りサイケを引っ張る。



「こら臨也、サイケの純真無垢な心を汚すな」

「今のどこに汚らわしい言語が含まれてたんだ」

「ねぇねぇ名前ちゃん、るーびっくきゅーぶって全部同じ色になれるの?」

「勿論」

「わぁっ!!凄いねぇ凄いねぇ!!」

「練習すればサイケも出来るようになるよ」

「教えてー!!」

「ねぇ」


和む会話にまた割り込んできた臨也にいい加減苛立ちを感じて思いっ切し殴ろうと右手に力を溜めた。



「っと、」


が、今度臨也が引っ張ったのはサイケではなく自分の腕。
呆気に取られるサイケを他所に臨也はさっきのアタシみたいにしっかりと抱きしめた。

「ち、ちょ」

「イライラするからやめて」

「それは、アタシがサイケを取ったから…?」


だとしたら何だ。アンタは同じ顔をどんだけ好きなんだよ。ナルシストにも程がある。まず、腹黒い臨也が純情青年に好意を持つ所から理解できない。
あれか、無い物ねだりって奴か。


「違う。逆だよ逆」



じゃあ…臨也がサイケを?


「マジで!!ああ見えてサイケはえー嘘だ有り得ない信じられねえぞそればっかりは無い物ねだりと言えど」

「ノンストップで話す所悪いけどその逆じゃない」

「じゃあどの逆ですか?」

「…ごめん、俺の言い方が間違ってた。俺がお前にイライラしてるの」

「いら……い、ら?誰に?」


「はぁ……どれだけ俺に言わせたいの」

「臨也くんはねー名前ちゃんの事が大好きなんだよ」

「こら、サイケっ!!」

「え…………っとぉ」


「俺が作られてる時から、臨也くんは普通の人間よりもずっとずっと名前ちゃんのこと愛してるーって、俺にぶつぶつ話し掛けてたんだ」


「サイケ…あなた」

「あぁもう!わかったよサイケ」

「臨也くんファイトー」


「いざ、」



文句を言いたかった口は、いつも愛を叫んでいる臨也のそれに塞がれた。



多くの人が斬り落としてやりたいと思う相手の手にキスをする




後書き:今が旬のサイケです。私には天使にしか見えない。






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