「ちかぁーおはよーさん」


朝一番に見えた眼帯君にまずはご挨拶…なんて固いかな、元親には。

「テメェ変な言葉遣いすんじゃねえよ」

「汚いより砕けた方がいいって」

「方言を喋る全国の人らに土下座して謝って来い」

「何をいうてんねん、おみゃーさんは」

「よし、土下座代わりにテメェの首を見せしめにすりゃあ万事解決だな」

「ちか、それは無しの方向でお願いしやすー」



相も変わらずちかの言葉は容赦ない。首を掴もうとする手をひらりと躱してみせる。手を差し出せば彼の肩に止まっていた鳥がコチラにやって来た。


「またいらねぇ芸をっ」

「アニキーちょっと……って名前さん!!どうして此処にいるんスか」



驚きを隠せないでいる部下にへらりと笑ってみせて、着物の裾をちょっと上げたりする。


「やあ、ご機嫌麗しゅう」

「どうも…じゃなくてアニキ!!」

「んだよ、コイツが勝手に侵入してくんのは癪に障るがいつものことだろうが」

「侵入とはなんだ!!夢遊病と呼ぶがヨロシ。起きたらいつも船内にいんじゃけえ!!」

「まず、船内に入ったら誰か気付くだろ。悔しいがそれは事実だ」

「いーじゃんいーじゃん、海風最高だぁし。ね、ちか」

「俺に同意を求めるな!!」

「アニキってば!!状況わかってますか?今から毛利の所に攻めるっていうのに…名前さん連れっていいんスか」

「っ、しまった……」

「あーいいんよ別に。私は平気やから」



しっしっ、と払ったらまた怒鳴られるんだろう。
まあそれも楽しいから良しとするか。
でも、返ってきた言葉は想像以上に静かだった。




「平気とかそういう問題じゃねえよ、取り敢えずこっから飛び込め」

「ア、アニキ……」

「小船の一つや二つ貸してやるからさっさと失せろ」



いつも以上に真剣な目。
私は知っているよ、これは戦に行く男の目。

知っているからこそ。



「嫌だと言ったら…」

「無理矢理にでも、だな」

「私はちかといる。戦えないわけじゃないもの」

「だからそういう問題じゃねぇって言ってるだろうが」

「じゃあ何?私なんて邪魔としか思ってないんでしょ?でもね私は、っ……………」



激情に駆られた自分を後悔した。いつもみたいに反応できなかった私は、気が付いたら大きな彼の腕に包まれてた。
あ、武器を刺しっぱなしにしてるから床に穴開いちゃうじゃない。
私の肩にいた鳥は離れてその武器の先端にとまる。




「邪魔なわけないだろうが。大事にしたいんだよお前を…海賊でもないお前を海の上で死なせたくないんだよ」

「ちか………」

「そりゃあお前の気持ちも汲みたいが、その…だな。多分、戦での俺を見たら嫌になるぞ。一緒にいるこがげふぐげごごあっ」

「何を今更いってんの、ちかは!!」



ちなみに、今の奇声は抱き寄せられたままの状態でちかを背負い投げしたせい。あ、一本投げだっけ?まーいいや。


「そーいう台詞は、私に肉弾戦で勝ってから言え」

「て、テメェ人が喋っている時に」

「その言葉そのまま蹴り返してやるよ。私だって言いそびれる所だったんだから」

「………?」


「私はちかのお荷物になるつもりはない。貴方の手足となって支える。護ってやるなんて男が聞いて呆れるわ、そんな覚悟がおありなら夢遊病の私を此処に入り込ませない手段を考えなさい。わかった?つまり…危険な目に合わせたくないって気持ちを男だけが持ってるなんて大違いよ」



一息で言った自分を褒めてやりたい。私は未だ仰向けに倒れたままのちかに手を差し出す。


「さ、毛利と同盟した豊臣の野郎共に一泡吹かせんでしょ」

「あ、あぁ」

「深い詮索はよしてよ。私は調べる事に限界を感じないから。後、」

「ごふぁっ!!!」


重なる手を使って再び俯せに叩き付けたちかに聞こえていただろうが。




「元親の戦ってる姿私は好きだよ。だって綺麗だもん」




若者は未来を夢み、
老人は過去を夢みる







「テメェ……」

「ぎゃははは、ちかの顔本当の鬼みたいー」

「やっぱり海の藻屑となりやがれッ!!!」










「アニキと名前さん、本当に仲がいいな」

「恋仲とは思えねぇよなぁ」

「なあ、戦の前にいいのか。体力消耗するだろあれ」

「アニキと名前さんの事だから大丈夫だろ。それよりも……」


「「「「いつ終わるんだこれ…………」」」」






後書き:方言使っている方々ごめんなさい。代わりに土下座しておきます。方言使っている方をイライラさせるような子を目指しました←



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