※学パロ文化祭ネタ









午前は全力で仕事をして、午後は全力で遊ぶ。
以上が本日の予定であります。

しかし戦況不利。ていうか午前の時点で予想外の事態発生。私の任務は棺桶の中に隠れて思い切り飛び出すこと。つまり、お化け屋敷のお化け役なのだ。
どひゃあーと盛大に驚く奴もいるけど、嫌なのは妙に冷めた連中。


最高学年だから来る客はほぼ後輩だし、苛ついて吐き出す言葉の汚さを許してちょーだい。無反応が一番傷付くのよ。



まあそんな事よりも、今はもっと重大な問題が発生している。
もう少し詳しく伝えるならば、脅かすことに支障は起きていない。
棺桶から血まみれの身体を乗り出して、そそくさと元の場所に戻る。


はい!勘のいい人は気付くでしょうね(わかんねーよ)
超危険区域はなんと私の背中と棺桶の間。今そこに隣のクラスの風魔小太郎君がいるのだ。

何故?とは聞かないで欲しい。
私もそのことで頭が一杯なのだから。
断じて私は誘っていないし、強要してもいない。お客さんとお客さんの合間、一陣の風が吹いたかと思えば風魔くんは既に私の背後にいたのだ。
他の人に気づかれなかったの!?
てか、受付ー!しっかりしろ。他クラスの男子が紛れてるぞ。
こんな混乱が脳内で延々と続くものだから、客の一人や二人を見逃す羽目になるじゃない。

ほら、お客さんやりきれない顔しながら素通りしてるよ。そりゃ立派な棺桶あったら誰かいると考えるわ。私も脅かしたい気持ち山の如しだよ。でも、風魔くんの視線が(前髪長くてよく見えないけど)背中にざっくざく刺さってるから、ね。
動くに動けねえよこんちくしょう。




「ふ、風魔…くん」



二人分の広さを誇らない手作り棺桶の中で、私は静かに呟く。勿論、客がいない間にだ。





「…………暑くないの?」



あああああ!!!!!どーでもいいことしゃべってんじゃないよ自分。どうして此処にいるか、でしょうが。しまった、風魔くんて喋らない人なんだっけ……。

そう思った頃には時既に遅し。寡黙な風魔くんは首をふるふる横に動かすだけに終わる。
風魔くんの少し長めの髪が頭に擦れてくすぐったい。




「そっかあ…暑くないのか……あはは。クーラー効いてるもんね。寒いくらいだよ待ったくぅ?」


突然。まさに突然だった寒いと言ったと同時に腰に回される両手。語尾が変に上がって気持ち悪い事になっているが、今はそんなのどうだっていい!

風魔くんに抱きしめられている…そっちの方が恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がない。だって私のウエストとか脂肪ばっかだし髪の毛は全力で四方にフリーダムだし。…って、抱きしめてる手が段々上にあがってませんかあああ?誰かヘルプミー!





「そこのお二人さんは一体何やってんのさ」


気怠そうな声と共に開けられた棺桶の蓋。瞬間、風魔くんの手はしゅばっとまさに神速並に引っ込んだ。目の前にいたのは幼なじみの猿飛佐助。
呆れ顔で見つめる彼の周りは明るい。確か佐助のシフトは午後のはず。てことは……。



「仕事…終わり?」

「午後は俺様がそこに入るから名前邪魔。話は戻るけど、なんで風魔小太郎がいるわけ?」

「そんなのこっちが知りたいよ。お陰で仕事が不完全燃焼だし………」

「………………」



しゅんとした空気が広がった風魔くんがこちらを不安げに見る。いや、今回は風魔くんが悪いんだからそれは狡いよ。



「べ、別にお化け屋敷で一人っていうのはちょっと寂しかったし、楽しかったかな…」


なんでフォローにまわっているんだ私!でも風魔くんの空気が花散るかの如くぱあっと明るくなっていくのを見ていてホッとした。




「わかったから早くどいて頂戴」

「じゃあ佐助。後は宜しく頼んだ………ん?」



それも束の間。
教室を出ようとした私のTシャツをくい、と掴むのはまたしても風魔くん。流石に口を聞かない彼の行動のみで感情を読み取る事は難しい。助けを求めるように佐助を見ると苦笑していた。何故に?



「名前と一緒に文化祭まわりたいんじゃないの?」


佐助の言葉にこくんと頷いて駄目?と首を傾けた風魔くん。あ、可愛いなぁ。



「い、いいけど………」

「その代わり風魔、名前の食い意地には全力で引いとけ」

「ちょ、佐助それどーいう意味よ」

「そのままでしょうが。忘れないよ去年の文化祭でまさかの、」

「あああああああ。私着替えてくるから教室の前で待っててね風魔くん。佐助は棺桶の中で死んでろ」

「あはー、了解」




残された風魔くんと佐助が何を話していたかは知らないけど、着替え終えて向かった教室の前で待っていた風魔くんに特別な変化は無かった。



「よし、行こうか」
「…………」


無言で差し伸ばされた掌。
まー、いいよね別に。




「全力で遊ぶぞー!!!」

突き上げた拳は二つ分。





よく遊び、よく学べ



















「名前に手を出すのはいいけど、暗闇ってシチュエーションはよくないなー。後、限界来たら俺様も黙っちゃいないよ」












後書き:佐助くんも微妙に混じりました。お化け役にとって最高の客はビビリ魔の方です。



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