儀式


「ね、刺してもいい?」
「あ? 何でだよ」
「気に入らないのよ」

変な宗教が大好きで、相方よりも、彼女である私よりもそれを優先させる。
それどころか、戦闘中でさえもその儀式をする、そんなところが。

それなのに、私が寂しいから会いに行こうとした矢先に部屋に来てくれて、そして部屋の隅にうずくまる私を抱き締めて優しい言葉を投げ掛けてくれる。

私の事なんてその変な宗教以下にしか思ってないくせに。

誰よりも私の変化に気付いてくれる
誰よりも私の聞きたい言葉をかけてくれる。
誰よりも私の事をわかってくれる


だから余計に


苛々する


「ね、刺してもいい?」
「だから何で……」
「苛々するんだってば」
「八つ当たりか?」
「違う。原因は貴方だもの」


八つ当たりじゃないの。
ただ気に入らないの。
貴方の身体に残る数々の傷跡が。
それが儀式のせいならばもちろん、敵にやられたのならば尚更気に入らないの。



貴方を傷つけて良いのは私だけ




「ね、刺してもいい?」
「……ああ」




儀式

(これは愛を確かめるための儀式)(私と貴方だけの秘密の時間)






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