072 叶わない願い


#アスマ#



今までずっと好きだった。


紅があなたのことが好きだって言った時、自分もだって言えなかったけど。
私の方がもっとずっと前から好きだったんだって言葉を飲み込んで。
ただ一言「頑張って」とだけ彼女に告げた。
諦めたわけじゃない。
友達のために好きな人を諦めるなんて馬鹿らしいから。
でも、紅と気まずくなるのが嫌で、言えなかった。


彼が紅のことが好きだって知った時も、私は何も言わなかった。
彼に気付かれないように精一杯“幼馴染”を演じた。
紅のことを話す彼はとても優しかった。
彼にこんな顔をさせているのが私じゃないことは悔しいけれど、そんな顔を見れるのは限られた人だけだから。
だからずっと自分の気持ちを隠し続けた。


今朝見た夢に、彼が出てきた。
2人きりで、ただ草原に座っている夢。
上を見上げると絵に描いたような青空で、周りには誰もいなかった。
何も話さずに2人で空を見上げていた。
ただ一言
「好き」
そう呟いたとき彼は優しく微笑んだ。
そしてまた、2人で空を眺めていた。
ただそれだけの夢。


「なに間抜けな面してんだよ」
「…へ?」
目の前にはタキシード姿の彼がいる。
「たく…折角のドレスが台無しだぞ?」
「さりげなく酷いこと言わないでよ」
「はは、すまんすまん。でもその赤似合ってんじゃん」
「普段着ないから奮発したの」
「そうか。なんかごめんな」
「なにが?」
「いや別にいいんだ」
「アスマ、なんか変だよ? あ、それより紅のとこ行かなくていいの? カカシに口説かれてるけど…」
「あ? たく、あいつは…。ま、これからもよろしくな」

彼はもしかしたら気付いてたのかもしれない。
それでも知らないふりをしてくれる優しさに目頭が熱くなる。
本当は私も純白のドレスを着たかった。
だけどそれはもう叶うことはない望み。

だから決めたの。
2人が幸せになればそれでいいって。
私はこの恋に終止符をうつ



さよなら、私の好きな人。





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