013 白い部屋


#ギン#


気が付いたら白い空間にいた。
余計な色は一つもない。
上下前後左右目に入るのは白一色。
自分だけがそこの空間における唯一の色。

なぜこの空間にいるのか、自分でもわからない。
いつものように仕事を終え、月を見ながら彼のことを考えて、それから……
……それから、どうしたんだっけ。
思い出せない。
そのまま寝てしまったのだろうか。
だとしたらここはどこだろう。

答えは出ない。
いい加減考えることを放置しようと、自分が寝かされていた布団に再び横になる。
そしてわけもなく掛布団を引き寄せたとき、よく知った霊圧が近付いて来た。
それは間違いなく、ずっと会いたいと思っていた彼のもの。

ふすまが開く。
目を開けて今すぐにでも飛びつきたい衝動に駆られるが、そうしないのは確かめたいことがあるから。

「ごめんな。零ちゃん。勝手に連れてきてしもうて」

「って…まだ寝てるんかいな。昔からようねる子やねえ」
静かに頭を撫でてくれるその手は、以前と同じでとても暖かい。

「やっぱ僕、零ちゃんがいないとダメみたいや」
そう呟く声は少し切なさを含んでいる。



しばらく寝たふりを続けていたら、今度は起きるタイミングを失ってしまったので、彼の服をさりげなく掴んでみる。

「まったく、零ちゃんにはかなわんなあ」
急に掛布団がめくられたと思ったら、彼が隣に入ってきた。
久しぶりの彼のぬくもりに、思わずすり寄ってみるとふっと笑って彼は優しく抱きしめてくれた。


きっと彼は私が起きていることに気が付いている。
なぜなら、私の心臓が大きな音をたてているから。
それでも何もいわずに強く抱きしめてくれる彼は、きっと私が何を考えているのかわかっているのだろう。
私が瀞霊廷を裏切ろうと考えていることにも、きっと……



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