087 盗撮カメラ


#冬獅郎#



こんな夜はいつも彼のことを考える。
今、誰とどこで何をしているのだろう。
風の音ひとつしなければ、月明かりすらない。
真っ暗で静かなこの環境が私をどんどんオカシクさせる。

彼は残業だと言っていた。
それすらも嘘のように思えるのはきっと昨日のあの言葉のせい。

「明後日は雛森と約束がある」

私との約束より彼女との約束の方が絶対多い。
いつも優先されるのは彼女の方。
2人で何をしてるのか、なんて聞きたいけど聞けるわけない。
彼にとって彼女は家族だから。
でも血は繋がっていないし彼女が彼を恋愛感情として好きでないと確信はないから安心してはいられない。

何度歪んだことを考えただろう。
盗聴器を仕掛けよう、2人の後をついて行こう、彼女と彼を引き離そう……
バレて嫌われるのが嫌だからなにも行動しない。そんな私はただの弱虫。



盗撮カメラのようにバレずに彼を見ていられたら……
そんなことを考えながら、今日もまた冷たい布団に身を沈めた。




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