060 夢の続き


#弓親#



夢を見た。

いつもと同じ生活の中に現れた大きい物体。
身体の真ん中に穴があいていて、日本語を話す不思議な物体。
私をみた途端そいつは言ったんだ。
「オイシソウナヤツガイル」

怖くなって逃げ出した。
現実にこんな奴がいる訳ない。
夢だってわかってても怖いものは怖い。
早く醒めてって思いながらも走る。
けどそいつもすぐ後ろを同じ速さでついてくる。
運動が苦手なのは夢の中でも変わらないようで、なにもないのに派手に転んだ。

もうだめ。
夢の中だとわかっていても、死に対する恐怖がを支配する。
怪物の腕が伸びてきて私を捕まえようとしたとき、突然黒い誰かが目の前に躍り出た。

「もう大丈夫だよ」

その誰かの手には刀が握られている。
その姿を見て怪物は「死神か」って言ってたけど、死神っていうものは人の魂を刈るものだと誰かが言っていたはずだ。

「君は僕らが見えるのかい?」
気がついたら怪物は消えていて、死神と呼ばれた誰かが話しかけてきた。思わずほっとして涙が出てしまう。そしてこくりと頷けば、
「泣き顔もいいけど笑った顔の方が見たいな」
と言われた。
差し出された水色のハンカチで涙を拭って彼を見る。男の人だとは思えないぐらい整った顔で、目元に何か付けている。
そしてそのまま笑うと彼はぼそっと「美しい」とだけ呟いた。



覚えてるのはここまで。気がついたら布団の上で、ああやっぱり夢だったんだと理解する。着替えずに寝てしまったらしい。
お風呂入ろう。
脱衣所で服を脱いでいるとひらりと何かが舞い落ちた。
それは自分の物ではない、水色のハンカチと『これは僕らだけの秘密ね』と書かれた小さな紙切れ…



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