初めての




「これがあいつらが言ってた“ぷりくら”ってやつか…」
「すごいよね。写真に落書きができるなんて」
目の前にある四角い箱を目の前にして感心する姿はきっと人間からしたら変な人にみえるのだろう。すれ違うカップルが私たちを見ているのがわかる。今は12月24日の夜。定時にあがってそのまま現世にきた。何で現世なのかといえば、この前乱菊とルキアが『現世に面白い写真機があって、自分で落書きできちゃうのよ』と騒いでいる時に居合わせてしまったから。『2人で撮ってきなさいよ』と乱菊に詰め寄られれば拒否することはできなかった。

――好きな明るさ選んでね
――どの背景にする?

しゃべる箱に驚きながらもなんとか背景を選ぶ。一角はその間なんだか難しい顔をしていた。

「次どうしようか」
3枚撮り終わって、まだあと3枚も撮らなければいけないのに、ポーズが思い浮かばない。残りの背景を選ぶ時間を利用して考えては見るものの、全く思い浮かばないうちに次へ進んでしまった。
「零、黙ってろ」
急に低い声を出したと思ったら、腕を強い力で引っ張られた。
「い…一角?」
「良いからこっち向け」
上を向いた瞬間目の前が真っ暗になって、キスされたことに気付く。写真を撮ってるのに一角は全く気にしない。手で胸を叩いても流石十一番隊三席。全く動じる様子はない。やっと撮り終わったところで一角を睨むように見ると顔を真っ赤にしている。落書きする写真を選択するときに最後の3枚を除こうとしたが一角に止められた。

「零はこの3枚な」
「う、うん」
写真に文字を入れられるなんてそれだけでも驚きなのにまさかペンで書くだなんて思っていなかった。それだけでなくペンの種類も選べて色や大きさも自由。人間の考えるものはすごいなと思いながらもどんな事を書き入れるか考える。
一角はどうしているのか見たいと思いながらも書いた文字は写真が出来上がるまで内緒にすると約束をしてしまったので見ることはできない。こうしている間にもどんどん時間は過ぎていく。とりあえず名前やら日付けやらを書き入れて最後の一枚に取り掛かる。自分と一角のキスシーンなんて恥ずかしすぎて長時間見ていられるものではない。
それが画面一杯に広がっているなんて穴があったら入りたいぐらいだ。
これ以上見てると倒れてしまいそうなので赤のペンで1つだけハートマークを書き入れて急いで他の写真に変更した。




「行くぞ」
落書きを終えた写真が出てきて一角がどんなことを書いたのか見ようとするとそれを遮るように声がして、顔を上げるとると一角はすでに歩き始めている。だから完成品を見ることもなくあわてて財布に入れ、追いかける。

その後は2人でご飯を食べて、一角の家に行って……
朝起きたら机の上に『ちゃんと食べろよ』と走り書きされたメモと朝食が用意されていた。
「あ、そういえば……」
ふと自分の鞄が視界に入り、昨日の写真をまだ見ていないことに気付く。
「一角、どんなこと書いたのかな」


写真を見た私は最高にアホ面だっただろう。
眠気なんて一瞬で消え去った。
「一角がこんなこと書くなんて……」



愛してる



写真をそっと財布に戻した。




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